そっと、囁くように置かれた言葉に、肩が少し揺れた。
いつもそうだ。
始まりも終わりも、告げるのは僕じゃない。
何でこうなるのか、初めは全く分からなかったけど、ようやく分かってきた。


「…うん。ごめん」

「謝らないで…」


ポロポロと涙をこぼす彼女に、申し訳ない気持ちでいっぱいになった。
どうしていつも傷つけてしまうのか、どうすれば傷つけずに済んだのか、今の僕なら、分かる。


「…ありがと。じゃあね」


伝う涙はそのままに、つい先日まで見せてくれていた、ふんわりとした笑顔を見せて、彼女は去って行った。

僕って、最低だな…。
初めから、首を縦に振らなければ良かった。
僕なりに、彼女を好きになったつもりだったけど、彼女が僕に抱いてくれたそれとは比べ物にならなくて。

僕は、どうして彼女をちゃんと好きになれなかったのか。
…いや、違うな。
どうして、それ以上の存在を頭の中から消せないのか。

うまくいかない。
頭で考えたって、分かるわけないんだ。
体が、心が、勝手に動いてしまうんだから。






「さっこーん!今帰り?」

「あぁ」

「なぁに暗い顔して。テストの成績でも悪かった?」


左近ってガリ勉だよね〜
なんて、褒め言葉じゃない。
真面目にやってるだけじゃないか。


「別に。フられただけ」

「えっ…あの森ガール系の子!?なんでっ!?」


誰のせいだと思ってるんだ、なんて、八つ当たりも良いトコだ。
紛れもなく僕のせいであって、目の前の幼なじみのせいじゃない。
でも、決して関係ない訳じゃない。


「さぁ。飽きたんじゃないか」

「嘘…そんな子に見えなかったけど…そっ、か」


うん、そんな子じゃないよ。
気遣いの出来る、感じの良い子だった。
僕のどこを気に入ってくれたのかは分からないけど、悪いことしたなって、思ってる。
でも、仕方ないだろ?
気づいちゃったんだから。

僕はもう、お前しか見えてないんだって。


「左近!!」

「な、何だよ」

「家来なよ!久しぶりにゲームでもしよ!」

「はぁ!?何で僕がゲームなんか…」

「良いじゃん昔はよくやったじゃんよ!ご飯も食べていきなって!」

「お前が作ってる訳じゃないだろ…」

「細かいことは気にしなーい!グチグチ言ってるとハゲるよ〜」

「なっ!?誰がハゲだ!いくらなまえでも言って良いことと悪いことが…」

「あーはいはい文句は家に着いてから聞くわ。ちゃっちゃと行くよー」


強引なところも、一言多いところも、昔から変わらないな。
そんな彼女が好きなのも、想いが強くなることはあっても、僕の中に存在していることは変わらない。

どうせ、ただの幼なじみ、ぐらいにしか思ってない。
実際、彼氏だっているし。

それでも、コイツじゃなきゃ駄目なんだから、仕方ない。
真面目な優等生を自負してるけど、結構どんくさいし、ずぼらだし、意気地がないトコもある。
自分で認めるのは癪だけど…。
そんな僕を、誰よりもよく知って、認めてくれてるのは、お前だろ?
そこだけは、妙な自信があるんだ。

だから、良いんだよ。
何があっても、どんなに痛くても、傍にいるって決めたから。
お前が僕を手放すまで、この場所は誰にも渡さない。
それが、今の僕の答えだ。


「なまえ」

「んー?」

「…サンキュ」

「どーいたしまして!」


にかっと笑った顔が、今より幼いなまえと重なって、僕も自然と笑えた。

僕はやっぱり、お前が良いよ。




もうさよならは言わない




***
H23.4.7
H23.6.13 改
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