何をやっているのか。
馬鹿らしいと、自分でも思う。

シャラシャラと高い音で鳴く大きなピアスも、やたらと主張してくる香水も、全くもって好みじゃないというのに。
…もしかしたら、身につけているのが彼女なら、好きだと思ったかもしれない。

そう思い付いた時点で、内に秘めていた嘲笑が、表に出ていたようだ。


「なに笑ってんのー?」

「何でもねぇよ」


可愛くないとは言わない。
でも、彼女程じゃない。

案外気はきく。
でも、別に居心地が良い訳じゃない。

嬉しそうに、俺を好きだと言う。
嫌いではないが、たぶんさして好きでもない。


分かってるんだ。
俺が本当に好きなのは、彼女しかいないってことくらい。


「…あ、悪い。これから左近と約束あるから」

「えぇー!?買い物付き合ってくれるって言ってたじゃん!?」

「悪い、また今度な」

「三郎次、そればっか…いつなら行ってくれんの?」

「あー…じゃあ、来週な」

「…ホントに?」

「あぁ」

「…分かった。また、連絡するね」

「気をつけて帰れよ」

「うん!」


にっこり笑って頷く様は、可愛いと思う。
自分が悪いとはいえ、よく怒らせて文句を言われるが、その姿も嫌いじゃない。
あぁ、俺って愛されてるんだな。
そう感じるから。

彼女は、ワガママとも呼べないようなそれすら、言ってくれなかった。
それは、俺が頼りなかったのか、気を遣っていたのか。
前者もあるかもしれないが、恐らく後者だろう。
彼女は、人の心の動きに敏感で、頭の回転も早かったから。





「待たせたな」

「ホントにな。自分で呼び出したくせに」

「悪かったって」

「あの子に会ってたのか?」

「あぁ。約束してたの忘れててさ」

「…お前、最低」


げんなりとした、呆れかえった顔をした左近を見て、何だか安心した。
やっぱり落ち着くのは、こっちだ。
あの子は俺を美化しすぎてると思う。
そんなに出来た男じゃないのに。


「…返す言葉もございません」

「…なまえにはこんなこと、しなかったくせにな」


左近は、本当に痛い所をつくのが上手い。
というか、俺のことがよく見えてるからだろう。

彼女に、なまえに、する訳がない。
待ち合わせの時間にだって、遅れたことはなかった。
必ず10分前には着いていたし、下手をすれば30分も前に着いてしまうこともあったくらいだ。

それだけ、俺にとって、特別だった。


「…お前さ、いい加減、どうにかしろよ」

「…どういう意味だよ」

「いつまでなまえのこと引きずる気だよ。今の彼女にも失礼だろ」

「……仕方ねぇだろ」


初めての恋人じゃないし、立場とか距離とか、そんな障害もない。
なまえは、ごく普通の同級生で、見た目が人よりちょっと可愛いくらいの、普通の女子だった。

ただ、嘘くさくなるけど、衝撃的だったんだ。
彼女に出会った時、運命だって思ってしまうくらいに。
雷に打たれたような感じだった。

…柄でもないけど、本気で惚れてたんだ。
それをそんな簡単に、…忘れられる訳、ないだろ。


「…気持ちは、分からないでもないけど…。原因を作ったのはお前たち二人だろ?割り切るなり、より戻すなり、きちんとけじめつけた方が良いと思うけど」


出来たら苦労しねぇよ。

そんな台詞すら、吐き出す気力がなかった。

左近の言葉は真っ直ぐで、嘘がない。
どこか、彼女のようだった。

俺なりに、精一杯だったんだよ。
余裕なんてなかった。

…一年半も付き合ってたってのに、そんな情けないこと、彼女に言える筈もなくて。

…でも、もし、カッコ悪いなんて見栄張らずに、伝えてたら。
何か、変わってたんだろうか。

なまえ、お前を、失わずに済んだのか…?

好きで好きで仕方なかった筈の笑顔が、くすんでうまく思い出せない。

最後の、歪んだ笑顔しか。





見栄意地と、その末路





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H23.8.23
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