「…?どうしたの?」
こてんと首を傾げて、君が言う。
疑問に思うのはもっともだ。
じっと、無言で見つめられていたのだから。
並んで歩く昼下がり。
陽の光を浴びて、君のふわふわの髪がきらめいてる。
そんな様子に、ふと目を奪われただけなんだけど。
首を傾げる君が、愛らしくて。
思わず、じっと見入ってしまった。
「…なまえ?」
困ったような声色で、ようやく意識を引き戻す。
話す時は、目と目を合わせて。
「ごめん、何でもないよ」
「…ほんとに?」
「ほんと。シロの顔を見てたかっただけだよ」
すると君は、変なの、と言って、少しだけ嬉しそうにする。
どこか照れたような表情が、とても可愛い。
抱きしめたくなるくらい。
だけど、こんな街中じゃ叶わない。
「早く着かないかな…」
「なまえ、疲れた?」
「ううん。早くシロといちゃつきたい」
「…どうしたの、今日、なんか変だよ」
「変じゃないよ。いつも思ってるもの」
丸い目を更に大きく見開いている君を横目に、少し速歩きをする。
君は背が高いし、足も長いから、いつも私のペースに合わせてくれる。
だけど、それじゃ時間がかかるから。
私は、早く君の家に辿り着きたいの。
「…なまえ?」
「なぁに?」
「無理しなくて良いよ?」
「これくらい無理じゃない、よ」
「息、上がってる…」
「気のせい」
「じゃないよ」
「気のせい、だよ」
「ほら」
「ーッ…」
自分の体力の無さに呆れる。
体を動かすことの好きな君とは、まるで正反対。
めんどくさがりの出不精にいつも合わせてくれてるし、偶には…、と思ったけど。
結局、このざま。
我ながら情けない体だ。
「なまえ」
「…うん」
当たり前のようにすっと差し出される手は、大きくて、ゴツゴツしてる。
重ねた自分の手は、子どもの手のようにも見えた。
こんなにも、穏やかで、優しくて、人を和ませる力に富んでいるのに。
その体は、大きくて、分厚くて、ゴツゴツとしている。
でも、その頂の髪は、ふわふわとやわらかい。
首から上の雰囲気が、君の印象を形作っていて、体の持つ威圧感を包んでる。
そんな感じ。
不思議な人。
繋いだ掌の感触は力強いのに、私を見る目はやわらかい。
きっと、バランスが絶妙なのだ。
きっと私は、それがたまらなく好きなんだろう。
「もうすぐだよ」
「うん」
「今日のなまえ、何だか可愛いね」
「いつでも可愛いって言ってなかった?」
「可愛いよ。そうだけど、今日はもっとかな」
「シロもいつでも可愛いよ」
「それはあんまり嬉しくないなぁ…」
「仕方ないよ、事実だから」
困ったように笑う君は、やっぱり可愛い。
アパートのすぐそこまで来ていることに気付いて、駆け出したくなる衝動を抑えた。
一緒じゃないと意味がない。
私は早く、君を抱きしめたいのだから。
「なまえ」
「なに、」
気の急いている私とは対照的に、君の声色は落ち着いてる。
その割に、強引なキスが降ってきたので、慌ててしまった。
「続きは帰ってから、ね」
そう言ってにっこりと笑う君は、間違いなく可愛いのに。
私の手を引く強さも、歩調も、何も変わってない。
ただただ、私だけが揺さぶられてる。
「なまえはホント、可愛いね」
ちらっとこちらを流し見て、ふっと目を細めた君は、たまらなく格好良かった。
やわらかくつつむ、
***
H30.8.27
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