あれから、一週間も経っただなんて、変な感じ。
なるべく、考えないように努めてきた。
こんな時、仕事って、なんて有り難いんだ、なんて思う。
打ち込めることがあるって、本当に有り難い。
…いつも、そう思えた方が良いとは思うけど。
足が、重い。
鞄も、肩も目も、…困ったことに、気持ちまでも。
だけど、逃げてばかりじゃ何も進まない。
そこまで切羽詰まってるって訳じゃないけど、焦ってない、とは、言えない。
今すぐ、なんて思ってないけど、五年は…、ちょっと、長い、よ。
いつか途切れてしまうんじゃないか、そんな不安を抱えながら過ごすには、あまりに長い。
卒業してすぐって言うんなら、少しは早まるけど…、金銭面もそうだし、まだ仕事でいっぱいいっぱいな時期に、変化を増やしてしまうのは、負担になりかねないし…。
…要は、私が、怖がってるだけ。
どれだけ信じていたって、覆る時は、あっさりとやって来るものみたいだから。
どうにもならない時だって、ある。
もっと、苦しまずに済む方を選ぶことも出来る筈だから。
…どんな顔して、会えば良いんだろう。
変な気は遣わせたくないし。
少し躊躇って、一呼吸おいてから、インターホンを鳴らす。
暫くして、そうっと、扉が開いた。
控えめに顔を覗かせる彼が、遠い人に思えた。
「…お待たせ」
「…いえ、お疲れさま、です」
あぁ、遠い。
何もかもが、ぎこちなくて。
そういえば、暫く、彼の笑顔を見ていない。
「ご飯、食べた?」
「…はい、一応」
「そっ、か。…あ、冷蔵庫、借りて良いかな?」
「…はい」
つい、いつもの癖で、食材を買い込んで来てしまった。
寂しいなんて、思っちゃいけない。
…私、こんなにも、頼ってたんだなぁ。
どうしよう、さび、しい。
「…なまえさん」
「ッ、あっ、な、なに…?」
彼に、左近くんに、名前を呼ばれるだけで、それだけで、
…こんなに、嬉しいなんて。
少しだけ、泣きそうになった。
「…この間、一緒にいたのは、クラスメイトで、映画を観に行ってて、その…、それだけ、です」
先日の光景が、頭の中で蘇る。
そう、だよね。
何にもないん、だよね?
…信じて、良い、よね…?
「あっ、そう、なんだ。仲良いんだね。可愛い子だったし、」
「いや、付き合わされただけで…特別仲良いとかじゃ、ないです」
「そ、そっか。えっと…、」
酷く、安心してる自分がいる。
だけど、気を抜くと、卑屈な自分が出てきてしまいそうで。
余計なことを言わないように、気を引き締める。
「…珍しい、ですね。土曜日が休みなんて」
「え…、あ、あの日は、病欠の子が出た時に休日出勤したから、代休になって。決まったのも急だったんだけど、ちょうど、伊作から電話がかかってきてね、映画の話になったから。私も観たいと思ってたヤツだったし、折角だからってことになって、」
「仲、良いですよね、」
「え…っと、伊作?うん、まぁ、大学からの付き合いだし、気は合うから、」
「そう、ですね。僕よりもずっと、」
「……左近、くん?」
何だか、空気が、冷たい。
淡々と、ぽつりぽつりと言葉を吐き出す彼の顔が、怖くて見れない。
何か、癇に障ることを言ってしまったんだろうか。
脈が、速い。
冷や汗が、止まらない。
「…思ってたんですけど、」
ヒヤリと、首筋に刃物を突きつけられているような感覚。
体験したこともないのに、確かにそう、感じる。
目も耳も、塞いでしまいたかった。
「なまえさん、25歳、でしたよね。学生なんかと付き合ってないで、そろそろ本気で婚活しないと、行き遅れるんじゃないですか」
すべてが、崩れ去る音が、聞こえた気がした。
***
H26.5.21
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