今すぐ、消えてしまいたかった。

なんてことを、言ってしまったんだ。

そんな、心にもないこと…、

去り際の、苦しい顔なのに、いつもみたいな、優しい笑顔が、僕の胸をザクザクと抉っていく。

…だけど、カケラも思っていないなら、あんな言葉は、出ないから。

ほんの少しでも、胸の内にあったから、なんだろうな。

だからって、もっと言い方があったろうとも、それ以前に、言う必要があったのかとも、思ってる。

後悔、してる。

でも、どうすれば、戻れると言うんだろう。

元に戻りたいと、思っても、ないかもしれない。

このままじゃ、きっとまた、当たってしまうから。



「…、」



この食材たちは、僕じゃ使い切れないので、

あんなの嘘だから、忘れてください、

…どうやら僕は、言い訳が下手らしい。
全然良いのが思い付かない。
どうしたって、上手な嘘は、吐けそうにない。


一人の部屋に、重苦しいため息が、いやに響いていた。








「…、川西、」



この一週間、全く話しかけられることがなかったから、反応が少し遅れてしまった。

神妙な面持ちで声をかけられたものだから、何だかこっちまで気を張ってしまう。



「…、なに?」

「その…、大丈夫…?」



伺うように、そろりと、言葉を置く。

僕は、そんなにピリピリしているんだろうか。
もしくは、落ち込んで見えるのか。

いつも通りを心がけているのに。

コントロールするのは、なかなか難しいらしい。



「…まぁ、大丈夫だよ」

「…そうは見えないけど、」

「…良くはないけど、まぁ、仕方ないから」

「…、やっぱり、あの時の…」

「いや、誤解はとけてるから。それは関係ない」

「…川西さ、嘘、下手だよね」



そんなの、とっくに自覚してる。

それに、別に嘘じゃない。

なまえさんがいなくったって、生きていけない訳じゃない。

ちょっと、寂しくはなるけど、それもきっと、最初だけ。

すぐにまた、慣れる筈だから。

…、大丈夫。



「どうしようって、顔に書いてある」

「…、何だよ、それ」

「ちゃんと、話、した?思ってること、言った?」



僕の母親にでもなったつもりなんだろうか。

お節介ともとれる台詞に、辟易してくる。

そんなもの、言えたら苦労しないけど、言わずに飲み込めるなら、それに越したことはない。

口は禍の門、とはよく言ったものだ。



「川西さ、あんまり自分から喋んないでしょ。言う時ははっきり言うけど…。結構顔には出るからさ、何か言いたいんだろうなってのは分かるけど、何を言いたいのかまでは分かんないから。気になるんだよね、いつも。今だって、そう」



そう言って、小さく笑うクラスメイトが、大人びて見えた。


ほんの一瞬、少しだけ、彼女と重なった気がした。





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H26.5.31
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