「…はい?」



あまりに急な展開に、全くついていけない。

何を言い出すんだ、この人は。



「だから、俺と付き合って」






あの、まるで夢―今思えば悪夢―のような出来事から、早ひと月、

…気づいたら、すっかり捕まってしまいました。


彼―次屋さん―は、えらく強引で、非常にはっきりとした人であるらしい。

パッと見では、何考えてるか全然分かんないのに。

自分の考えをズバズバ口にしては、思うままに行動するのは結構だが、それに私をぐいぐい巻き込んでいく。

はっきり言って、迷惑。

方向音痴だか何だか知らないが、呼び出した本人が迷った挙げ句、私が探して迎えに行くって、どういうこと?

鶏料理がおいしい店があるから連れて行きたいって言ったのはあなたでしょう?

探しに探して、やっと見つけたと思ったら、全く見当違いな場所にいて…。

結局、二人が顔を合わせる頃には、お店のラストオーダー10分前。
待ち合わせ場所に戻るだけで30分もかかる始末。
当初の待ち合わせ場所からは5分もあれば着くと言うのに…

ホント、信じられない…

何って、そんな男と付き合ってしまった、私自身が。



「なまえー?」

「…何ですか」

「なに変な顔してんの?」

「…元々です」

「まじでか。ドンマイ」

「……」



加えて、デリカシーがない。

一々腹を立てることすら、あほらしく感じる。



「なぁー」

「…何ですか」

「なんか怒ってんの?」

「…いいえ」

「ふぅん」



ふぅん、って何だ。

興味ないですか。

…ならば何故訊いた!?

あぁぁもうイライラするぅぅー…!!



「なまえー?」

「だから何ですか」

「ちゅーして良い?」

「嫌です」

「なんでッ!?」

「何でも」

「…なまえさぁ、俺のこと、キライ?」



急に、こういうこと言うから、嫌だ。

何故小首を傾げて上目遣いするのか。

どちらかと言うと女子の仕草でしょうよ。

生物学上、女である私はしませんけどね。

そんな可愛げ、持ち合わせていた記憶すらございませんので。



「…嫌いでは、ないですけど」

「、そっか」



腹は立ちますけど、って付け加えようと思ったのだけど。

あんまりに、嬉しそうに笑うものだから。

思わず、飲み込んでしまった。


…そういうの、ズルイと思うんですが。

たぶん、狙ってやってる訳じゃないと思うから。



「…やっぱり、腹立つ」

「え、なに?」

「こっちの話です」

「え、誰かいんの?」



こわっ!ホラーじゃん!?
とか何とか騒いでいる姿は、何だか、学生時代の、教室で騒ぐ男子のようで。

あぁ、捕まったんだなぁと、改めて気づくのであります。



「なぁなぁ、やっぱちゅーして良い?」

「絶対嫌です」






祭り






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H25.3.16

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