『私たちは、』



それは、突然のことだった。

いや、そう、思いたかっただけかもしれない。



『わかり合えるけど、』



彼女との付き合いは、二年を越える。

友人関係であった期間は短く、出会ってすぐに、惹き合うように互いの隣を選んでいた。



『補い合えない』



僕と彼女は、よく似ていた。

考え方から、ちょっとした癖まで、似すぎる程に。

隣にいる間に、一層、似通ってきていたように思う。



『そろそろ、』



誰よりも、安心出来た。


"わかってくれている"

それを、どんな言葉や行為よりも、求めていたから。

きっと、彼女も同じ。

何しろ、僕らは、不思議なくらいに似ているんだから。



『私たちも、進まなきゃ』



大粒の涙が流れたのは、どちらが先だったのか。

きっと、同時だったんだろう。

僕らのことだから。





――そうして、僕と彼女は、友人になった。


彼女の言葉は、すとんと、僕の胸に入って来る。

それは間違いない。

いつだってそうだ。

口にしなくても、何となく、言いたいことも分かる。

そんな彼女は、今日も笑っている。



「おはよう、藤内」



と言っても、にっこり、と言う程には笑わない。

微笑む、と言うと、柔らかすぎる気がする。

少しだけ口角を上げて、ほんの少しだけ目を細める。

それが、彼女の笑い方だ。

僕は、それが好きだった。



「おはよう、なまえ」



彼女は、変わらない。

いや、変わろうとしている。

だから、僕との関係を変えた。

心地良いだけでは駄目なのだ。

僕も彼女も、この場に留まることを、良しとはしない。

いつだって、何かを、その先を、追い求めて行くことに、生を感じる性質らしかった。



好きだとか、嫌いだとか、愛しいとか、憎らしいとか、そう言ったことじゃないんだ。

僕らは、離れてなんかいない。

今だって、誰よりも近くにいる。

誰よりも、わかり合えてる。

そんなこと、分かりきってるんだ。

それは彼女だって同じ。



僕らは、離れたんじゃない。


わかってるんだ。



…それでも、僕は、






君の隣で、息をしていたかったよ。





(きっと、ぜんぶ、わかってたんだね)











***
H24.11.11

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