チカチカとした光に気がついて、手を伸ばす。

表示された文字に、安らぎすら覚えるようで。

逸る心を抑えて、少し、ゆっくりと指を置く。



「…もしもし?」

『…おー、なまえか』

「はぁい、なまえですよ」



今日日、電話番号なんてものは機械に登録されているのがほとんどで、表示を見間違えでもしなければ、そりゃあ本人に繋がるでしょうよ。

とか何とか思いながら、彼の口から自分の名前が出たことに、頬が緩む。

そんな自分が、存外嫌ではないようで、ちょっと参る。



「どしたの?」

『あー…、いや、』



歯切れの悪い答えに、軽く首を捻る。

比較的、はっきりと物を言う人だから、言い淀む時は大体、後ろめたいことがある時だけど…、思い当たる節がない。

何だ、何をやらかしたんだ。
君か?私か?
いつだ、どこでだ?

ぐるぐると、焦燥による思考をひたすら巡らせてみても。
うまくヒットしなくて、更に焦る。



『あー、なんだ、ちょっと、』

「…ちょっと?」

『声、聞きたくなってよ、』

「…私の?」

『、おめぇ以外誰がいんだよ』



それもそうだ。

少し低くなった呆れ声に納得しながら、先程の言葉を反芻する。

え、なに?
私の声が聞きたくなった?
なにそれ誰が言ったの?
え、作兵衛?
なんなの、それ。



「…随分可愛いこと言うのね」

『…うるせぇ。思っちまったもんは仕方ねぇだろ』

「悪いなんて言ってないでしょ。可愛いって褒めてんの」

『褒めてねぇだろ、それ。…あー、失敗した』

「ホントだってば」

『そうじゃねぇよ。なんか、』



この人は、時折、顔に似合わず可愛いことを言う。

もっとも、顔立ちそのものが、って訳じゃなくて、表情が厳ついことが多いだけだと思うけど。
顔立ち自体は、目はつり上がってるけど、それなりに可愛い方だと思うし。
…まぁ、惚れた欲目と言われればそれまでだけど。

何にせよ、その発言は、酷く私を喜ばせるものでしかなくて。



『声聞いたら、会いたくなっちまった』



ほら、今だって、そう。

何でもない口調で、そんなこと言わないで。

こっちなんか、とっくに、

声より先に、ディスプレイの文字だけで、こんなにも、



「…迎えに来てくれるなら、行くけど」

『……帰さねぇけど、』



そんな野暮なこと訊かないで。

その台詞へ被せ気味に返ってきた、
『すぐ行く』
に、思わず笑ってしまった。











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H27.5.30

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