「要するに、そういうことだと思うわけよ」
「…何がどういうことなわけ?」
彼女―なまえ―の言動は、いつでも唐突で、意味が分からない。
彼女の中ではきちんと繋がっているんだろうけど、口にするのは、その、ほんの端っこだけ。
言葉が足らない。
そんなんじゃ、分かるわけないじゃないか。
「だからさ、私がいて、藤内がいるでしょう?」
「なまえと僕がいて、それで?」
咀嚼するように、繰り返す。
ひとつひとつ確かめなくちゃ、ひとつでも互いがズレていれば、話が噛み合わなくなってしまう。
彼女の癖なんだ。
より、ぴったり当てはまる言葉を探すのは。
そして、見つからないのなら、限定しない。
だから、端的な言葉を、箇条書きのように並べたり、ひとつの言葉を、重すぎるくらいたくさん形容したり。
誤解されたくない。
いつだったか、彼女が言っていた。
その気持ちが、何となく分かるから、僕らは会話が出来るんだろうね。
「それが、愛しいってことだと思うの」
君と、僕がいて、それが、愛しいって?
それは、君が僕を、愛しいと思ってくれているってこと…?
「…なまえ、それは、さ」
「あのね、藤内」
「…なに?」
ひやりとした汗が、頬を伝う。
淡々と、それでいて、穏やかな空気を纏った君は、やんわりと、そっと、僕の思考を遮るけれど。
じわじわと、ふつふつと沸き上がるように、僕の熱が、上へ上へと集まってきてるって、分かってるの?
「私、藤内にだけは、誤解されたくないの」
"その意味がわかる?"
とでも言いたそうな瞳で僕を見つめる彼女に、僕の鼓動の早さを、どうやって伝えようか。
まどろっこしいのは無しにしよう。
誤解されちゃ困るもの。
「なまえ」
僕の腕に閉じこめられた彼女の頬は、見たこともないくらい紅くて、嬉しそうにゆるんでいた。
あぁ、なるほど。
これが、愛しいってことか。
点と線を結ぶ
(好きだよ)
***
H23.10.19
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