軽くなった頭とは対照的な心が、下へ下へ、私を引きずり下ろすようで。

ただただ、重い。

差し出されたその単語に、観念するしかないのかと、無音のため息を吐いた。



「…どういうこと?」



彼の声は、どちらかと言えば、高い。
私と話す時は、他の人と話す時よりもトーンが低いけど、そんなの、比じゃないくらい。

冷え切った、鋭い声。



「ねぇ、どういうこと?俺に嘘吐いてたの?何でそんなことしたの?」



頭をひたすら占拠する感情は、"恐怖"だ。

ただ、こわい。

こんなタカ丸を、私は知らない。



「黙ってちゃ分からないよ。ねぇ、なまえ。聞こえてるでしょ」



人付き合いが上手くて、口も回る。
人に合わせるのなんてお手の物だし、少々のことでは怒らない。

そんな人なのに。

私は、何をしてるんだろう。

視界と、思考が滲む。



「…ねぇ」



一際低いそれに、肩が揺れる。

言葉が、うまく舌に乗らない。


嘘を吐いた理由を話すなら、バラしてしまわなければならない。

私は嘘が下手だから、誤魔化したり出来ないし、そういう小細工を自分が使うのは、好きじゃない。

本当は、嘘なんて吐きたくはなかったけど、そうでもしなければ、決心がつかなかったから。

本当に、相手が見つかれば問題はなかったけど、それが出来れば、初めから苦労はしてない。

…潮時。

覚悟は、したはずだったんだけどな。





「…終わらせたかったから」





絞り出すように、

力の入らない体を奮い立たせるように。





「叶わないのに、傍にいるの、もう、しんどい」





俯くと、零れ落ちてしまうから。


顔を上げる。


もう、見納めだから。





「こんなの、言われたくないと思うけど、ごめん」





小さく息を吐いて、ぐっと息を止める。


吸い込んだ空気で、エンジンをかけた。






「好き、だよ」







こんなに苦い台詞だなんて、知りたくなかった。






***
H28.7.17


ALICE+