…頭が痛い。

目の周りがヒリヒリする。

喉もカラカラ。

体全体がだるい。

脱ぎ捨てられた服や、コンビニ袋の散らばった醜い部屋は、まさに私そのもの。

…思い出したくもないのに、思い出すまでもなく、脳裏に焼き付いて、消えてはくれない。

驚いたような、強い嘆きを感じるような、そんな顔。


言うつもりはなかった。

なんて。

苦しくて仕方なくて、ただ吐き出しただけ。

まるで、責めるような言い方で。

あまつさえ、泣いてしまった。

気がついたのは、店を出てからだったけど。


くすんだ鏡を覗き込めば、目元を赤く腫れ上がらせて、むくみにむくんだ、血の気のない顔をした女がいる。

あぁ、これが私か。

これじゃあ、ね。


昨夜に何があろうが、朝になれば出勤しなければならない。

休むことだって出来るけど、前もって申請してないし、体調を崩している訳ではないから気が引ける。

何より、この淀んだ空気しかない空間に、一人でいたくはなかった。

仕事でもしている方が気が紛れる。

…かもしれない。


きゅるきゅると、まぬけな音が零れ落ちる。

こんな状態でも、腹は減るらしい。

人は、そう易々とは死なない。

失恋したくらいでは、死なないのだ。


カチカチに凍った食パンをトースターに放り入れる。

キリキリとダイヤルを回すと、程なくして熱が入った。


朝食を摂るようになったのは、いつからだったか。

学生の頃は、ほぼ食べてなかった気がする。

チョコレートを一かけ二かけ、つまむくらいはしてたかもしれないけど。

多少は食べないと、頭働かないよ、なんて言われたっけ。

朝に限らず、元々あんまり食べないから、しょっちゅう食べ物を与えられてた気がする。

餌付けされてるみたい。
って言ったら、
馬鹿言ってないで食べな。
って怒られた。

面倒見良いんだよね、昔から。
料理とか、家事も、一通り出来るし。
たぶん、私より。

胃を温める為にも、あったかいの飲んだ方が良いって、コーンスープを大量にくれたこともあった。

それからは、朝ご飯用に常備してる。


パン焼いて、お湯沸かして、スープ入れて。

いつの間にか、習慣になってた。

何も考えなくても、それこそ寝ぼけてても、用意出来るくらいには。


こんなことになっても、私の生活の中に、彼がいる。

癖になってしまっては、そう簡単には変えられない。

…こんな調子で、私は、どうやって忘れれば良いんだろう。

もう、叶うどころか、会えもしないのに。

時間が一番の薬だなんて言うけど。

ちゃんと、効いてくれるんだろうか。


あぁ、馬鹿だなぁ。

なんで、言っちゃったんだろ。

こんな思いするくらいなら、辛くても、我慢すれば良かった。

好いた相手の幸せだけを願える程、私は、人間出来ちゃいないから。

ずるずると引きずるこの痛みがある内は、まだ、繋がってる気がする、なんて。


馬鹿につける薬はない。

あまりに身に染みて、涙が出た。





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H28.9.5


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