グラスに入った水が、揺れてる。

ただそれを、ぼんやりと眺めてる。

そんなようなことが、私の頭の中で起こってる。

一体何がどうなっているのか分からなくて、頭の中をきょろきょろと見回してみるけど。

目の前にある光が強すぎて、見えない。

そんな感じ。



「なまえ」



自分を呼ぶ声に、はっとする。

むくんで小さくなった目が、いつもより大きく見開かれてるのを感じる。

え、待って。

なんて?

なんて、言ったの?



「…なまえと同じようには、俺は、思えない」



突き刺さる言葉の意味は、長い時間をかけて、自分に言い聞かせてきた。

慣れたと言えばそうだし、それでも堪えきれなかったのも事実。

平気な訳じゃない。

でも、そんなことより、

タカ丸に、そんな顔をさせてしまったことが、
何より痛い。



「ごめん。勝手言ってるのは、分かってる」



"勝手"

…それは、たぶん、お互い様。

もっと言えば、きっと、私やタカ丸に限ったことじゃない。

だけど、
ちょっと、安心した。

思い上がりかもしれないけど、
大事に思ってくれてるような気がして。



「でも、なまえには、傍にいてほしいと思ってる」



彼の視線を、真っ正面から、真っ直ぐに受けるのは、もしかしたら、初めてかもしれない。

少しだけ揺らいでいるその目が、好きだと思った。

その、小さな脆さが、柔らかく、他者を受け止めるんだろうな。

私には、出来ないこと。

そんな小さな"好き"も、積もり積もれば、離れがたいものになる。


本当に、後悔したの。

言ってしまったこと。

自ら、離れようとするなんて。

なのに、今は、
もしかしたら、言って良かったのかもしれない、なんて、思ってる。

本当に、この頭はおめでたい。

どんな形でも良い。

タカ丸が望んでくれるなら。

傍に、いれるなら。





「……、ありがと」




大きく頷いた拍子に飛び散った水滴も、絞り出した声も、何だか、愛おしかった。




***
H29.3.7


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