何が良いのかと問われれば、うまく答えられない。
オンナノコたちは、オシャレでカッコイイよね!とか、優しそう、とか言うけど、そうかぁ…?と思ってしまう。
オシャレがどうとかよく分かんないし、優しいって言うよりヘタレで優柔不断って感じ。
たぶん、私の好みではない。
友達としてはアリだと思うけど。

そんなことを思ってはいるものの、じゃあ何で付き合ってるんだと訊かれると言葉に詰まってしまうので口にはしない。
まぁ、奴をカッコイイだの何だの言う子なんて、近しい人の中にはいないし、騒ぎ立てる知り合い程度のオンナノコには言わせておけば良い。


「なまえちゃーん?何考えてるの?」

「別にー」

「折角一緒にいるんだから、僕のこと考えてよ」

「え、めんどくさい」

「ひどっ!?なまえちゃんそれ酷くない!?」

「酷くない酷くない。ホントのことだから」

「余計酷いよー!!」


お前は女子か。と言いたくなるような台詞はいつものこと。
べったりと背中にくっついてくるのもいつも通り。
ぎゅぅぅっと力を入れてくるのが苦しいので、肘鉄を鳩尾に一発入れて差し上げるのもいつものパターンだ。


「ぅっ…げほっ…なまえちゃぁん…」

「何よ」

「い、痛い…」

「そう。良かったね」

「良くないよ…!」

「アンタが抱きついてくるからでしょ」

「良いじゃんなまえちゃんとイチャイチャしたいもん!」

「はぁ!?誰がいつお前とイチャついたよ!?もんとか言うな気持ち悪い!」

「なまえちゃん酷い!!」

「うるさい黙れ馬鹿!」


これも一連の流れと化してきてる。
色恋沙汰とは無縁の二十年間を過ごしてきた私にとって、奴の言動は不可解極まりない。
自分の感情は隠せない方だし、思ったままを口にしてしまう質だとはいえ、さすがに彼氏に対してそれはないだろう、と思わないでもない。
が、やっぱり慣れなくてむず痒いので、こんな言い合いになってしまう。
コイツも、私の何が良いんだか。
自分で言うのもなんだが、女らしさのかけらもないというのに。
ホント、変な子。
コイツも、私も。


「…なまえちゃん」

「何」

「…怒ってる?」

「別に。アンタがお馬鹿なのはとっくに知ってる」

「酷い…!でも、怒ってなくて良かった」


ふにゃっとだらしなく笑うのが、タカ丸の癖だ。
頼りないな、とは思うけど、放っておけなくて、なんとなく安心するのもホント。
だから、また性懲りもなく抱きついてくるけれど、何だかんだ言いながら許してしまう。
手のかかる弟が増えたみたい。
コイツより四つは年下のウチの弟でも、もうちょっとしっかりしてるんだけどな…


「ねぇ、なまえちゃん」

「なーに」

「好き」

「………」

「照れてる?」

「…うっさい」

「なまえちゃん可愛い♪」

「黙れ馬鹿丸」

「ひどっ!なまえちゃんは僕のこと好きじゃないの?」

「……………すき」

「ーッなまえちゃん好き好き大好き!!ちゅーしよう!!」

「それは嫌」

「なんで!!?」


すぐ調子に乗るしうるさいしお馬鹿だけど、きっと嘘じゃないとは思うから。
一緒にいるのは、嫌じゃない。
むしろ、心地良いから。
今はそれで、良いじゃないか。

いつもは何とも思わない彼のふった香りが、妙に甘くて愛おしく感じたのは、
すぐそばにある体温に鼓動が高鳴ったのと同じ理由だなんて、
教えてやらない。
今はまだ、ね。




シュガービターハニー




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H23.3.26

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