明るい茶色を一房、手に取る。
この行為に、意味なんて、特にないけれど。



「パサパサ…」

「あッ、それ言わないでよ。ちょっと無理しすぎちゃってさ…ケア頑張ってるんだけど、流石に傷んじゃって」

「切れば?」

「えー…うーん…」



傷んでしまったのなら、切れば良い。
そして、まだ元気な髪を大切にすれば良い。

それだけのことだと思うけど。



「アレンジしにくくなるからね…あんまり切りたくないなぁ」

「あぁ、傷んでる方がアレンジはしやすいんだっけ?」

「まぁね。俺が言ってるのは長さの問題だけどね」



パサパサに乾いた髪をちょいと摘まんで、見上げている。

お洒落さんは大変なのね。
私には務まりそうにない。



「なまえは、そのままでいてね」



それは、何に対して?

顔の裏側が、ざわつく。

私は、アンタのそういうところは、好きじゃないわ。



「私は、完全に傷む前に切るわよ」



適量を守れば、薬。
過ぎれば、毒。

見た目が愛らしく、甘く繊細な様は、砂糖菓子のようだと思った。



「俺は、なまえのそういうトコ、好きだよ」



なるほど、

その笑顔が。
その台詞が。

予防線のように張り巡らされたそれに、

私は、無性に腹が立つ。



「私はアンタのそういうトコ、嫌いだわ」



こんな台詞を受けて、嬉しそうに笑みを深める、そんなところが。

安心したようなその面を、塗り潰してやりたくなる。



「うん。…ごめんね」



意味が分かっているから、腹が立つの。
望む先が見えるようで、泣きたくなるの。

適量ですって?
知ったこっちゃない。

それなのに、



「なまえは、そのままでいてね」



甘ったるいそれを、
滑稽な程、
好いているから。

いつまで経っても、





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H28.4.10


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