頭が痛い。

やっぱり、酒なんて飲むもんじゃない。

酒の力でも借りなければ、言えやしなかっただろうから、仕方ないんだけど。

あぁ、痛い。



『二日酔いでしょ。当たり前だよ』



呆れ返った声色が、鼓膜を揺らす。

わざわざ電話してくるんだから、律儀だと思う。

彼の助力がなければ、我が家まで無事に帰り着ける筈がないし。

尤も、私が酒を飲むのは彼の前だけだけど。



「あー、うん」



電話口特有の、少しくぐもった声が、誰もいない部屋に響く。

我ながら、だらしない。

あー、洗濯回さなきゃ。
掃除機もかけておかないと。



『大丈夫だとは思うけど、今日は大人しくしてなよ』



結構、面倒見良いのよね。
頼んなさそうに見えるけど。

部屋には入ったことがないけど、鞄の中は整ってるし、ティッシュやハンカチもすぐ出てくる。

待ち合わせしても、大体5分前にはいるし。

仕事終わりでもなければ、遅刻はなかった気がする。



「ん、あんがと」



こんなだから、手放したくなくなる。
こんなのを、見捨てないから。
だからこそ、期待して、馬鹿を見るんだけど。



『…なまえ、昨日、自分が言ったこと覚えてる?』



訝しげな、少しの戸惑いを孕んだような声が届く。

珍しいこと。

のらりくらり、ふわふわと読ませないか、
飾りを取っ払って、素っ気ないか、
いつもは、そのどちらかしかないじゃない。



「ん…何だっけ?」



間の抜けた返事に、呆れと、少しの憤怒の混じったため息が漏れた。

そうそう怒る人ではないし、大丈夫だろうけど。

飲んだ翌日の私は、いつもこうだから。



『…結婚、するって』



どうして、そんな言い方するの。

重苦しく、窺うように、なんて。


…知ってるわ、とっくに。

期待しているような意味じゃないってね。



「え、そんなこと言った?」



戻らなくちゃ。
いつもの私に。

望まれたように。


そして、終わる。



「それ、彼氏出来た、の間違い」



同じようにため息が、ひとつ。

今度は、安堵の。



『気、早すぎ』



私さ、酔っぱらっても、記憶は飛ばないタイプなの。

誰にも、言ったことはないけど。





***
H28.4.22


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