生き物が好きだ。
生物委員なんてものを、ずっとしているからかもしれない。
自然と触れ合う機会は多かったし、心が穏やかになる気がする。
命の儚さも、力強さも、人よりは、多く感じてきているかもしれない。
アイツらとは、言葉を交わすことは出来ないけど、何となく、通じ合ってると思う。
今のは何の為の行動だとか、今何がしたいのかとか、感じとれるようになった。
反対に、俺のしたいことを分かってくれるようになったり。
おかげで、忍務実習なんかでは助かってる。
兵助みたいに頭は良くないし、三郎みたいに器用でもない。
雷蔵みたいに博識じゃないし、勘右衛門みたいに機転がきくわけでもない。
でも、俺には助けてくれるコイツらがいる。
そう思えるようになった。
そして気がつけば、委員長代理なんて務めていたりする。
下級生ばかりだし、他の委員会より人数多いし、俺に出来るのか、正直不安だった。
でも、今年入学した一年生たちは、素直だし、よく働くし、良い子たちばかりだ。
孫兵も、周りが見えなくなることは多いが、後輩を気にかけることも覚えてきたようだ。
学園生活五年目にして、俺の毎日は、なかなか充実していると思う。
そんな俺にも、悩み事がある。
これがまた、なかなか厄介な問題だ。
こういった類のことは、あまり得意じゃない。
だから、実際はどうだか知らないが、きっと得意だろうと思われるお前に相談してるんじゃないか、三郎!
「さっさと言ってしまえば良いだろう」
「それが言えたら悩んでねぇよ…」
「何を迷うことがある。馬鹿が悩んでも良いことないぞ」
「誰が馬鹿だ!」
「考えてもどうしようもないことをうだうだ考えているお前のどこが馬鹿じゃないと言うんだ馬鹿左ヱ門」
俺の頭をはたきながら、三郎が淡々と告げる。
確かにそうだ。
考えたって分からないなら、行動した方が良い。
普段の俺ならそう言うだろう。
こんな自分には違和感すら覚える。
…それでも、つい、後込みしてしまうんだ。
「お前、みょうじとは仲が良いだろう。いくらでも機会はあるじゃないか」
「そうなんだけど、よ」
「もしフラれたら気まずくなるのが嫌だとか、そんな理由か?」
「いや、そう言うんじゃなくて、」
それは、思わないことはない。
でも、そうなったらなったで仕方ないし、諦められるかどうかは分かんねぇけど、自分で区切りはつけれる筈だ。
そう、じゃなくて。
「…アイツ、行儀見習いじゃなくて、本気でくの一になりたくて、この学園にいるんだ」
「五年生まで残ってるくらいだからな。そういう奴も多いだろう」
「もし、アイツも俺を好いてくれたとして、…色恋沙汰とか、アイツにとって負担になるんじゃないかと思うと…」
くの一となると、俺たち男の忍では理解できないような苦しみがあるんだと思う。
勿論、逆も言えることだけど、俺は良いんだ。
守るもんがあった方が、強くなれるってよく言うだろ?
でも、アイツは、なまえは、どう思うだろう…
それが恐くて、ずっと、二の足を踏んでる。
「…お前がそんなことで悩むなんて、な。愛されてんな、みょうじ」
「茶化すなよ。真剣に悩んでんだからな」
「まぁ、うまくいくことを前提に悩んでるのがお前らしいか」
「ん?」
「悩むのは勝手だが、さっさと言った方が良いと思うけどな」
「…それが出来たら苦労しねぇって」
「欲しいもんは手の届く内に手に入れとかないと、後悔するぞ」
「それ、どういう…」
「後は自分で考えるんだな」
そう、言い残して、三郎は行ってしまった。
三郎の、あの台詞が、妙に引っかかる。
何だか胸騒ぎがするけど、頭の中はこんがらがったままだ。
こんなのらしくない。
それだけ本気だって言えば、そうだけど。
なぁ、なまえ。
お前の考えてること全部、感じ取れたら良かったのにな。
でも、そうなったらきっと、つまらないんだろ。
いっそ、言葉なんて、なくて良かったのかもしれない。
抱きしめるだけで、すべてが伝われば良いのに。
臆病なケモノ
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