「解せないんだ」
「…何が?って聞いてほしいの?」
ぽつりと落とした言葉でも何でも、きちんと拾ってパスを繋げることが、彼と関わる上で非常に大切なことだと私は学んだ。
正直めんどくさいかと問われれば、すんげぇめんどくさいと答えたいところだが、優しくて気の利く女子を目指しているのでぐっと我慢して差し上げます。
「運命だと思うんだ」
「久々知と豆腐が?」
「それは当たり前だろ。そうじゃなくて、」
「あーはいはい。そうじゃなくて?」
「……何で気付かないかな」
「私は久々知じゃないんだから分かるわけないでしょ。ちゃんと言葉で表現しなさいよ」
ぶすっと、ふてくされたように頬を膨らませる姿は、一般の女子の目から見れば"可愛い"と表せるのだろう。
ただし、天然だか何だか知らないが、マイペース極まりないコイツの性格を知っている私には適応されない。
どれだけ振り回されてると思ってるんだ。
これには、友人代表の竹谷八左ヱ門が深く頷いてくれることだろう。
「俺たちだよ!なんかもう、相性バッチリだろ?阿吽の呼吸っていうかさ、」
「それは私の不断の努力の賜物だと気付きやがれ馬鹿野郎」
頬を少し赤く染めながら、興奮気味に言う豆腐馬鹿にあまりに腹が立ったので、思わず豪快に頭をはたいてしまった。
いけない、いけない。
品のある淑やかな女性になる筈が。
どうしてこの男、久々知兵助は、こんなにも人をイラッとさせることに長けているのだろうか。
非常に迷惑だ。
「…みょうじ、痛い」
「そっか、おめでとう」
「…何がおめでとうなんだ?」
「あぁ、間違えた。おめでたい、だ。お前の頭が」
「…もしかして、馬鹿にしてる?」
「もしかしなくても、救いようがないくらい馬鹿だと思ってる」
「…ツンデレか」
「お前マジ黙れ」
ホント久々知と喋ると疲れる…。
これについていける、竹谷をはじめとする友人たちは大したもんだと思うよ。
まぁ、尾浜と雷蔵はスルー、鉢屋は上手いこと竹谷に押しつけるから、実質、苦労してるのは竹谷だけなんだろうけど。
あと、私。
「何をそんなに怒ってるんだ?みょうじの怒った顔って、般若みたいだな」
「駄目だ。マジでしばいて良い?もう良いよね?ってかしばく」
「わーみょうじストップストップ!」
「止めるな竹谷ぁあ!!」
「頼むからそのカッターは置いてくれー!!」
「離せっ!あの馬鹿の睫毛と眉毛削ぎ落とさんと気が済むかぁ…!!」
「俺肌弱いから、剃刀負けするんだよなぁ…」
「兵助お前とりあえず黙れ!豆乳買ってやるから!」
「え、なんで?」
あの白い肌にカッターなんて当てたら、剃刀負けどころじゃ済まないだろう。
つやつやすべすべした女子より女子らしいコイツの肌を、本気で荒れさせてやりたいと思った。
羨ましいかと問われれば全力で羨ましいと答えてしまいそうになりますが、非常に悔しいので決して口にはしません。
「みょうじったら、相手にしなければ良いのに」
「それが出来れば苦労はしないんだけど」
「そういえば、なまえっていつもそうだよね。どうして?」
「…だって、無視したら余計うるさいじゃん」
「え、そう?」
「すぐ拗ねるんだから放って置けば良いのに。その内機嫌直るよ」
「雷蔵の言う通り。一々相手するお前が馬鹿なんだって」
「黙れ鉢屋」
「え、何この扱いの差!?」
尾浜や雷蔵の言うことが、私には分からない。
いくら面倒見の良い女子に憧れる私だって、あまりにめんどくさくて無視したこともあった。
なぁ、なぁと、しつこく声をかけられ続けても延々放っておいたら、何やら一人で怒り出してとってもめんどくさかったのは記憶に新しい。
適当に相槌を打っていれば機嫌が良いから楽だ。
…基本的には。
今のように度が過ぎると、私の堪忍袋の緒が盛大にぶち切れるのだが、これは仕方がないと思う。
私よく頑張ってると思うよ。
誰も言ってくれないから自分で褒めておきます。
「…雷蔵、ずるい」
「あ、兵助。豆乳買って貰ったんだ?良かったじゃん」
「うん。おいしい」
「お疲れ、八左ヱ門」
「おう…」
「で、兵助、僕の何がずるいの?」
「…何で雷蔵だけ名前で呼んでんの?」
「なまえのこと?」
「は?私?」
「…うん。みょうじは何で雷蔵のこと名前で呼んでんの?」
「名前で呼んでって言われたから」
「私も名前で良いよ、ってなまえが言ってくれたから」
「…ずるい。俺も名前で呼びたいし呼ばれたい…!」
女子か。
思わず本音が口から飛び出しそうになったけど、これ以上負担を増やすと竹谷の胃とお財布が大変なことになりそうなのでぐっと飲み込むことにした。
何て言うか…、すんげぇ、めんどくさい、です。
めんどくさいです、が、それを素直に口にしてしまうと、更にめんどくさいことになりかねないので、大人な対応をしてあげようと思います。
私って優しい。
「好きにすれば良いじゃん。名前ぐらい」
「えっ、良いのか…!?じゃ、じゃあ…なまえ」
「なによ」
「…俺のことは名前で呼んでくれないのか…?」
「あーはいはい、兵助、だっけ。これで満足?」
「…なんか、俺たち夫婦みたいだな…」
「どこがッ!?お前いっぺん病院行って来い!!」
「やっぱりなまえってツンデレだな〜」
「お前マジ黙れ」
意味分からん意味分からんとりあえず分かることはコイツの頭はやっぱりおかしいってことぐらいだ。
決して嫌いな訳ではないけど…、
もうヤダ…!!
(何だかんだ言ってさ)
(お似合い、だよね)
仲がよろしいようで
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H24.1.22
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