「あー…彼女ほしー…」
机に頬をつけ、手足を投げ出した、ぐでんとした体勢のまま、彼は気の抜けた声を吐き出した。
これは最早、彼の口癖と言っても過言ではないだろう。
こんな台詞を日常的に呟いているのでは、モテない男だと思われるかもしれないが、実際、そんなことはない。
愛想が良く、明るい空気を持った彼は、それなりにおモテになる。
が、長続きしないのだ。
「もう女は懲りたんじゃなかったの?」
一週間程前に、それまで付き合っていた彼女にこっぴどくフラれたようなのだ。
彼の方が、それはもう好きで好きでたまらなかったらしく、大層落ち込んでいたのだが、僅か七日程でこんな感じなので、まぁ、その程度だったんだろう。
本人としては、嘘偽りなく、本心から嘆いていたのだと思う。
とは言え、切り替えが早い、といった言葉で表して良いのやら、この身代わりの早さには、呆れてしまうのも仕方がないだろう。
「いや、まぁ、女の子はアイツだけじゃないし!後ろを向いてちゃ前進出来ないし!」
「あ、そ」
前向きなのは彼の長所だろう。
ぐだぐだは言うものの、少し時間をかければ、すっぱりと割り切ることが出来る。
それは、良さでもあるだろうけど、女から見れば、少々気になる性質だとも思う。
「次はどんな子が良いの?」
典型的な、女の子らしいオンナノコが、彼の好みだ。
ゆるく巻かれた髪に、ぱっちりと開いた目元を飾る上向きまつげ、淡いピンクがまぁるく乗った頬に、つやのあるグロスの光る口元、更には、丈の短すぎないふんわりとしたワンピースを愛らしく着こなすような。
小柄だが、華奢とまではいかない、程良い細身で。
同じ女でも、何か違ったイキモノなのではないかと思うような、オンナノコ。
どうしてこうも違うものか、不思議なくらい。
「んー…なまえみたいな?」
ごろんと、机に接する面を頬から顎にかえて、彼はこちらを向いた。
君に上目遣いされてもねぇ。
大体なんで疑問系なの。
ズルイ男だなぁと思う。
だから、オンナノコは騙されてしまうし、いつかは目が覚めるんだろうね。
「あ、そ」
自分がやけに落ち着いているのは、慣れてしまったのもあるだろう。
この台詞を聞かされるのは、初めてではないから。
…それだけじゃあ、ないんだろうけど。
「つれねーなぁ」
くしゃっと、顔の真ん中に皺を寄せて笑うのが、とても彼らしいと思った。
底抜けに明るい。
それだけでは表せない、色を仕掛けるような影を、彼は、持ち併せているのだと思う。
それがまた、魅力であり、欠陥なのだろう。
自分にとって心地の良い、スパイスとなるような辛味ならば、喜んで求める。
ところが、毒に成り得ると感付いた瞬間から、急速に冷えていくのが、オンナノコと言うイキモノなのではないかと思う。
そんな習性を、彼は、知っているのではないだろうか。
だからこそ、ズルイ男であり、悪い男だなぁと、より感じてしまうのだと、私は思うことにしている。
嫌いではない。
少しだけ、彼女たちよりも、よく知ってるし。
だからこそ、と言うこともある。
…でもまぁ、結局は、
私も立派に、
オンナノコみたいだから。
某地点より
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H25.1.28
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