彼女はよく泣く。

大体は、悔し涙だ。

負けず嫌いで見栄っ張り。
そんな形容がよく似合う。

すぐに意地を張るものだから、涙を見せることすら、なかなかしなかった。

今は、私の前では、泣く。

…私の前だけだと、自惚れて良いのだろうか。



「顔を拭け。見るに耐えん」

「…冗談に聞こえない」

「冗談だと思うか?」

「…意地悪いよ」

「知っている」



如何にも、と言った慰めの言葉を口にする程、私も素直ではない。
お互い様と言えば、そうだな。



「…順調、だったの」

「あぁ」

「計画通りに進んでたし、一時乱れかけたけど、うまく修正出来たと思う」

「そうだな」

「…私が、足を滑らせたりしなければ、…」



くの一教室との合同実習が、偶にある。
自由に相方を選ぶことが出来る時は、大抵彼女と組んでいた。

いつも、私が声をかける。
すると、それを待っていたかのように、彼女は私の手をとるのだ。

稀に、逆になることもある。
私もまた、どこかで、彼女の誘いを待っているのだろう。



「今となっては、後の祭りだな」

「…仙蔵がいなかったら、こんなもんじゃ…、」

「結果として、こんなもんで済んだのだから良かろう」

「今回はそうかもしれないけど、もしあの時…!」

「もし、の話は好かん。お前とて、そうだろう」



完璧を求めすぎるのだ。

不必要な程に神経を張り、すり減らし、思い通りに出来ない自らを責め、悔いる。

無駄とは言わんが、そこまでしなければならない等と言う制約は、どこにも無いのだ。

もっと上手く、程良い加減と言うものが、きちんと存在する。

…私は、痛い程に知っている。



「…くや、…しい」

「……」

「…、悔しい」



そんなことを言うなら、私だって、悔しい。

お前を、守りきることが出来なかった。

結果として、私は、お前の負傷を防げなかったのだから。

思い出したように痛む自らの傷など、どうだって良いのだ。

お前が、その傷を戒めのように感じるのと同じように。



「…仙蔵」

「何だ」

「…次は、違う子と組みなよ。私とじゃ、成績に響くどころじゃ済まないだろうし」



包帯が巻かれた私の右腕をちらりと見て、目を合わせずに言う。

本当に、何も分かっていない。

そんな彼女を、とても愛おしく思った。



「私は好んでお前を選んでいる。嫌ならば、お前が断れば良かろう」

「……」

「そうでなければ、私は何度でもお前を選ぶ」



鏡を見るような心地を、いつも感じている。

そんなお前を、私が放っておくと思うか?

早く、気付けば良い。

分かち合うと言うのは、なかなか悪いものではない。

他でもないお前だから、一層、想うのだ。



「なまえ」

「っ…な、に、」

「顔を拭け。そんな顔、私でもなければ、見るに耐えん」



被せた手拭いごしに、彼女の頭を撫でた。

この一枚が、私の弱さであり、私たちの距離だろう。


なぁ、悪くはないと、思わないか?





いいじゃないか





***
H24.1.14

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