不思議なくらい、馬が合った。

『伊作』といった共通項があるとはいえ、どこか懐かしさを感じる程で。

とにかく居心地が良い。

俺が口にする前に、大体のことは汲んでくれる。

その逆も然り。

きっと、似たような生き方をしてきたんだろう。



「食満くんも、良かったら食べてって」



しかし彼女は、よく働く。

朝から夕方までは小児科の受付、一旦帰宅し、妹弟たちの食事の準備、夜はバーのバイトへ。

病院もバーも、週5は必ず出勤すると言うのだから、大したものだ。

食事以外の家事は、妹弟たちで分担していると言うが、丸一日休む日など、彼女には存在しないだろう。

そんな姿を見ていると、背筋が伸びる心地がする。

ぱっと見、自分たち学生とさして変わらないのに、その顔つきがどことなく、落ち着いている気がするのは、過ごしてきた時の重みなんだろうか。



「いや、俺の分まで大変だろ、」

「7人分も8人分も変わんないよ」



その上、人が良い。

流石、伊作の幼馴染みといったところか。

かく言う自分も、人のことを言えないと、よく呆れられるが。



「荷物持って貰えて、ホントに助かったから。お礼させて」



ね?、と、楽しそうに微笑まれては、首を縦に振るしか出来ないだろう。

大人びた笑みの深さと、無邪気な素直さが入り交じるようで、やっぱり、心地が良かった。





彼女は家族、と言うか妹弟が多く、食卓も賑やかだった。

自分が守る家族は多い方が良いと、よく思う。

それは単に、子ども好きだと言うこともあるが、どちらかと言えば、自分に兄弟が少なかったからだろう。



「手伝って貰っちゃってごめんね」

「いや、飯食わせて貰ったし。これくらい」

「ありがと。助かります」



それ。

その、笑い方。

控えめに、小さく笑みを深めるような。

それが、出会ってからずっと、離れない。



「みんな、仲良いんだな」

「ケンカし出すと激しいけど、まぁ、基本的には、ね」

「羨ましいな」

「食満くん、兄弟は?」

「兄貴が一人」

「…なんか、意外」

「そうか?」

「うん。しっかりしてるし、面倒見良いから、お兄ちゃんだと思ってた」

「伊作とつるんでれば、面倒見も良くなるだろ」

「確かに」



くすくすと笑いながら、食器を洗う手は止まらない。

小さな傷や、カサつきが目立つ、お世辞にも綺麗とは言えない手を、愛おしいと思った。


大学の帰り、鉢合わせたのは、ただの偶然なんだろうが、運命だとか、必然だとか、そんな言葉に置き換えても良いんだろうか。


今までにない感情に、やけに心が躍る。


ガラにもなく弾む鼓動を抑えることに必死な自分は、ちゃんと笑えているだろうか。


そんな自分が、妙におかしかった。











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H25.4.15


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