見たことがなかった。
こんなに、綺麗な、花嫁を。
淡いエメラルドグリーンに身を包んだ君が、再び去っていくのを見送って、軽く息を吐いた。
あとは、二次会に向けて少しだけ、目元と髪を整え直せば、自分の仕事は終わり。
今まで請け負ったどんな仕事より、緊張したし、集中していたと思う。
いつものように、ウチの店に来てくれた時のこと。
ゆっくりと、淡々と、君が告げた時の衝撃は、きっと忘れない。
『結婚、決まった。式も、することになったんだけど、ヘアメイク、頼める?』
その声色が、穏やかで、いつもにも増して、あたたかかったから。
『どうしても、タカ丸にお願いしたいの』
そんな台詞、一度も言ってくれたことなかったのに。
僕を頼ってくれたことなんて、ただの一度もなかったのに。
君が、どんどん遠くなっていく。
僕の知らない君になっていく。
だけど、ねぇ、その台詞には、あの頃の気持ちと同じ何かがあるって、自惚れても、良いよね?
近づいて来る話し声の中に、よく知った、聞き間違えることのない声がある。
もう、この時間が来たんだ。
時は、確かに、待ってくれない。
「タカ丸、ただいま」
目元を赤くしたまま、見たこともない顔で笑う君は、やっぱり、今まで見た誰よりも、綺麗だと思う。
こんなにも子供っぽく、笑えたんだね。
知らないことだらけだ。
ねぇ、なまえちゃん。
誰よりも傍にいてほしいのは君なんだって、今更わかっても、遅いよね。
「おかえり、なまえちゃん」
笑顔を作るのは得意な方だけど、今は、必要なかったみたい。
不思議なくらい、自然に笑えた。
だって、きっと、何よりも望んでいたのは、
君が幸せになることだったから。
これは、ホントにホント。
君が滲んで見えなくなるくらい、
心から、願ってるよ。
(だって、)
(Because I love you)
やっと気づいた
***
H25.5.23
このお話で、おしまいです。
お付き合い、ありがとうございました!
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