「最近さ、思うんだよな」
「何を」
「ちっちゃい子って、可愛いよな…」
「アンタそれいつもじゃん」
「そうとも言う」
「そうとしか言わねーよ」
「お前だって思うだろ?」
「そりゃあ子どもは可愛いよ」
「だろ!?なんかこう…思わず抱きしめて頬ずりしたくなるような…」
「いや、そこまでは。お前と一緒にすんな」
あぶないあぶない…
変態と同じ穴の狢などと思われてはたまらない。
私は普通の子ども好きのレベルだ。
興奮しているのか、仄かに頬を染めているのが非常に気持ち悪い。
「ちっちゃい子って天使だよな…」
「内容には同意するけど自分と一緒だと思うなよ」
「俺、こども好きなんだよ」
「知ってるよ」
「お前も好きだろ?」
「まぁ。アンタ程じゃないけど」
「やっぱさ、自分の子どもってほしいと思うか?」
「そりゃあね。他人の子であれだけ可愛いんだもん。自分の子なら尚更でしょ」
周りが少しずつ結婚モードに入ってきたせいもあるかもしれない。
式を挙げた子もいるし、今まさに準備に走り回ってる子もいる。
私たちも、そんなお年頃なのだ。
こんな所で恋人でもない相手とお茶なんてしてる場合ではないのだと思う。
私も食満も。
「やっぱそうだよなぁ」
「食満だってほしいんじゃないの?」
「そりゃ勿論!三人はほしいな!」
「あー大家族とか似合いそう。アンタは良いけど産む方は大変だよね。まぁ、経済面も大変だと思うけど」
「家族は多い方が楽しいだろ?家族の為なら、俺、何でも出来そうな気がするんだよなぁ」
嬉しそうに語るこの男なら、本当に何でもしてしまいそうだ。
手先は器用だし家事も出来るし、腕っ節も強い。
気が短くて自分を蔑ろにしがちなのが難点だけど。
旦那にするには悪くない奴だと思う。
これだけ結婚願望が強いというのに、相手はいないのだろうか。
「良い子いないの?アンタモテるでしょうに」
「あ?あー…何つーか、いるにはいるんだが…」
「何、気になる子いんの?」
「…お、おぉ」
「私の知ってる子?」
「…まぁ」
「だったら教えてよ!食満だったら信用出来るし、協力すんのに」
「…マジ?」
「マジマジ」
「…俺ってお前的にどんな風に映ってんの?」
「んー…ちょっと変態だけど男らしいし良い奴。ちょっとヘタレだけど」
「…なんか微妙だな」
「そう?褒めてるつもりなんだけど」
がっくりとうなだれる姿はちょっと可愛い。
そんなところも、母性本能を擽ると言いますか、女の子は好きだと思うんだけど。
食満って偶に変なトコで後込みするよなぁ。
もっと自信持って良いと思うけど。
「…お前的にはアリってこと?」
「旦那として?」
「だん…!?いや、そうだな」
「アリなんじゃない?家庭的な男の子ってポイント高いらしいし」
「…お前的には?」
「私?…まぁ、アリ、かなぁ?私の基準で参考になんの?」
随分と慎重になっているようで、何だかおかしかった。
食満の表情は真剣だから、笑っちゃいけないとは思うけど。
こんなに食満に想われてるのは、どんな女の子なんだろう。
やっぱり、家庭的で女の子らしい、守ってあげたくなるような感じかな。
私が知ってる子って言ってたよな…
素朴でふんわりと笑う、可愛い友人を想像してみる。
うん、あの子ならお似合いだな。
実際のところ、誰なんだろうか。
「…そっ、か。アリか…」
「食満なら大丈夫だって。で、誰なの?」
「…なまえ」
「ん?」
「俺と子どもつくらないか?」
…………私、疲れてるのかな…
うん、そうに違いない。
たぶん夢だわ。
周りが結婚だ子どもだって言うから、無意識の内に焦ってたのかもしれない。
偶々こども好きの食満と仲が良かったからこんな夢見ちゃっただけで、深い意味はないのよねきっと。
今日は半身浴でもしながらゆっくり休もうかな…
最近休みも出かけることが多かったから、疲れがたまってるのね。
うん、きっとそうに違いない。
「…お、おい、なまえ…?」
「…入浴剤買いに行こう。癒されるならラベンダーが良いかな…」
「は…?何言ってんだお前…?」
「私疲れてるんだと思う。食満も気をつけた方が良いよ。白昼夢なんて初めて体験したわ…」
「…ちょ、ちょっと待て!!」
「え、なに?」
「夢じゃねぇから!!」
「…何が?」
「…その、さっきの…、告白っつーか何つーか…」
頬を赤く染めて、目線を余所へ逃がしながらぼそぼそと喋る姿はなかなか気持ちが悪い。
そうか、夢じゃないのか。
…ん?
夢じゃないの?
……………え?
「…食満、いくら子どもほしいからって、早まるのは良くないと思うよ」
「…ど、どういう意味だよ」
「そりゃ私も女だから産もうと思えば産めるけどさ、食満の思い描くあたたかい家庭を築くにはまず恋愛結婚した方が…」
「待て待て待て…!何でそうなる…!」
「え、手っ取り早く子どもほしくて言ったんじゃないの?」
「ちがっ…んな訳ねぇだろ!俺、そんな風に思われてんのか…」
「いや、子どもほしさに暴走したのかと。友人として止めなきゃなぁと思って」
「…誰でも良いんじゃなくて、お前との子がほしいんだよ」
盛大にため息を吐いた後、ぐっと力のこもった目で私を見るものだから、はっと息を飲んでしまった。
まさかまさかとは思うけど、これは、もしかして、そういうことなの、か…?
「…食満、私のこと好きなの?」
「…おぉ」
「だったらそう言えば良いのに。何でそんなややこしい言い方するかな。混乱したじゃん」
「…す、すまん」
「なぁんだ、そっかそっか。食満が私のことをねー。へー知らなかっ………え?」
「…お前、天然だよな…」
心底呆れた顔をして、私の髪をくしゃっと撫でるものだから、何だかとってもカッコ良く見えてしまった。
自分が赤く、熱くなっていくのは分かっていたけど、
なまえさんのことが好きなんですが、俺のもんになってくれませんか。
なんて耳元で言われてしまったら。
頭が沸騰したのかと思うくらい熱くなって、くらくらした。
そのままふらっと倒れた私が、数年後には食満を名乗っているのだから、人生は分からないものだと思う。
ウチの旦那は少々ヘタレですが、イイ男です。
突然じゃない、計画的だ
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H23.8.17
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