馬鹿だと思った。

こんなことを続けて、何になるって言うんだ。

何も生み出さない。

あるとしたら、哀しみや虚しさだけ。

気づいているのが、その事実だけならまだ良かった。

それでも尚、捨てきれぬ想いだと、気づいてしまったから。

酷いぬかるみに自ら足を突っ込んだまま、抜け出せなくなってしまった。

これはなかなかの重症だと、誰よりも、自分が知っていた。

淡い色をした花が咲き乱れる夜も、滴る雫が止まない朝方も、じりじりと焦がすように照りつける炎天下でも、虫の音に彩られた夜空の下でも、体を冷やしながら進む雪原でも、いつでもお前を探した。

何があっても、離さない。

お前がふらふらと行ってしまうのなら、何度だって捕まえる。

そう、決めていた。

事実、俺程お前の傍にいた奴なんて、他にはいないだろう。

近付き過ぎると、見えなくなることもある。

俺には、お前が求めているものが何なのか分からなかったし、仮に知っていたとしても、それを叶えるのは難しいような気がした。

はっきりとは分からねぇが、自分ではない。
それだけは合っている。

そんな、苦い確信だけは持っていた。

皮肉にもそれは的中し、一握残していた望みすらも朽ち果て、とうとうこの時を迎える。

六年と言う歳月を、長いか短いかと振り返る気にもなれない。

いつしか、時など流れなければ良いと願うようになった。

そんな女々しい俺の心根を知れば、お前は笑うだろうか。

いっそ、笑ってくれ。

いつものように。

俺は、六年共に過ごしても、お前について、ちっとも分かった気がしない。

泣いても笑っても、これが最後だ。

お前が近くにいるのが当たり前だった、日常は。



「作兵衛」



何も変わらないだろ。

三之助が俺を呼ぶ、その声も、唇の動かし方も、その目も、何も。

違うのは、俺の心だ。

喉に空気が張り付くようで、気持ち悪い。

三之助。

お前は、いつでもお前のままだな。



「おう」



どんな言葉で、この別れを飾れば良い?

お前は、何を思う?

これからの人生よりも、お前のいない近い未来にどんな光を見出だせば良いのか、そればかりを案じてる。



「作兵衛、またな」



それだけ残して、お前は行くのか。

その、あどけなさの残る笑い方に、どれだけ振り回されたと思ってんだ。



あぁ、畜生。

何が何でも、生きなきゃならなくなった。

目の前を舞った花びらが、ふわりと光って笑った気がした。











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