(一目惚れ)

……光が。差したと思ったのだ。
何となくだった。何となくすることがあるかな、と当初所属したばかりの血盟の本部、砂の家に行ってみた。
そこで、出会ってしまったのだ。この靄がかった世界を、照らしてしまうほどの輝きを持った子に。

もともと何事にも興味が持てなかった。
他人も別に、嫌いなわけではない。ただ無関心なだけ。
好きの裏返しは無関心なだけだ、と昔誰かに言われた。その通りだと思ったし、言われたことで傷ついたとかは特にない。
そもそもなぜその話題になったかも覚えていない。

ただ気ままに、気まぐれにフラフラと。自分の好きなことをする。
適当にニコニコしておけば、人付き合いも問題ない。

けどどこか、世界はつまらなく、靄がかかったように見えて、よく欠伸をした。
料理がうまくいくと嬉しい。綺麗な景色は好き。動物も。
けれど人には、特になにも思わなかった。

「あら、ちょうどいい所に来たのね。ロロ。
任務受けに来てくれた?だったらこの人といってほしいところがあるの」

訪れた砂の家で、暁の間に向かった先にはいつもの通りミンフィリアと、見慣れるミコッテ族の女の子がいた。
所属したてなのだから基本的に見慣れないし、あった人も特に覚えていないのだが。

「こちらはエレノア・アルバニア。格闘士よ。エレノア。こっちはロロ・シマム。弓術士。
前衛と後衛とで、ちょうどいいでしょう?」

そういうミンフィリアの話は耳に入っていない。
ただひたすらに、ミンフィリアのそばに立つ女性に釘付けであった。

物静かな子。白い髪を邪魔にならないようにまとめ、涼やかな目元に差された紅が印象的。
ムーン・シーカーなのか、白さが際立っていた。

「…?私はエレノア・アルバニア。
…えぇと。なんだかこれから一緒するみたいだけど、よろしくしてほしい」

にこりと、小さくだが笑った。
瞬間。
ザァッとこの視界を覆っていた、靄のようななにかが引いた気がした。

差し出された手と、彼女の周りだけがなにやら日が差している気がする。
ここは屋内だったはずだが…と、目をこすってみたが変わらない。

少し首をひねりながら、差し出された手を握り返した。

「俺はロロ・シマム。うん、こちらこそよろしく」

エレノア・アルバニア。
うん、覚えた。

珍しく名前を反芻したことに、自身が今までと違う感情を抱いていることを、まだ気づいてはいなかった。






一目惚れ
(…任務の話聞いてた?)
(…ハッごめん。エレノア見てた)
(なんで……)
(言われてみればなんでだろう…?)

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