(無題)

私の何が、だめだというの。

「優雅でないわ」
「聡明でもない」
「貴方の兄達は、あんなにも秀でているというのに」

だから私は、私のできる分野で活躍してる。
それでもだめだというの?

「空手?そんなもの誰だってできるじゃないか」
「女の子がするものでもないわ」
「人を攻撃するとは、野蛮すぎる。日向夏家の恥だ」

じゃあ、わたしは、どうすればよかったの。

「そんなこと、自分で考えるものよ」
「お前はいつまでも甘えが抜けないな」

やめて。呆れないで。失望しないで。置いていかないで。
もっと頑張るから、がんばる、から、

「わたしを、ほめて、」

−…。
いつの間にやら、眠っていた。良くない夢を見ていたようで、寝起きの気分は良くない。
知らず流れていた涙をぬぐいながら頭を上げたところで、
自分の右手が何かを握っていることに気づいた。

「―…、有栖川」
「、えと。……おはようございます」

追った目線の先にいたのは、申し訳なさそうな、心配そうな顔をした、有栖川奏であった。

「……なに。何か用」
「あ、いえ…その、魘されていたので、起こそうかなぁ…とかなんとか…はい…
決してなにかしようとしたわけではないんで!!!」

わざわざ弁解するほうが怪しいと思わないのか。有栖川は焦ったように手を左右に振る。

「それはどうも。あんたは帰らなくていいの」

出しっぱなしにしていた荷物を鞄に詰めながら、何か言いたげにせかせかと目を動かしている目の前の男に尋ねる。

「え!?あ、そうですね。帰ろうとはしてたんですけど…」
「ねこけてる間抜けがいるからわざわざ足を止めてくれたって?悪かったわね」
「そうはいってないですよ……」

性格の悪い返し方をした自覚はある。
バツが悪そうに頬をかく有栖川に、悪いけど、と言葉を投げた。

「…寝起きは良くないの。あまり構わないほうがいいわ」

これは嘘だ。普段寝起きはいい。今日は…夢見が悪かっただけだ。

「や、俺は全然…全然、大丈夫なので…えっと、その、」
「…はあ、さっきから何。毎度のことだけど…」
「は、はい!はっきりしろ!ですよ、ね。言います!」

多少の期限の悪さに、苛立ちを言葉に乗せたところで、慌てて有栖川が返答を返した。
逡巡することは短くなったものの、相変わらずだ。
…こちらも全く成長もない、相変わらず加減だが。

「えっと、日向夏さんはいつも頑張ってますし、むしろ頑張りすぎてて少し休んでほしいというか、
俺も情けないことに日向夏さんに助けられたこともありますし…っ
何が言いたいかというとその、日向夏さんは、本当に、頑張っています。え、え、えらい!!!!!!!!」
「は、」

もはや勢いで言ったであろう言葉と同時に、頭を撫でられ、間抜けな声が出た。



----消失した続き----

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