(彼女の春は)
ひどい凍てつきを見た気がした。あの5年前の、いいや。それ以上に。
夏がいっとき死んだとはいえ、事件は収束し、穏やかに秋へと移り変わり、冬を迎えるはずだった。
風の噂で、療養が必要なほど彼女があの事件で負傷を負ったという話を聞いた。
だから、彼女が仕事に復帰した後、快気祝いと、ついでに対FOX用の銃の改造を依頼しに行った。
彼女への用向きとしては、メインは改造依頼だった。
改造を誰に頼むと良いかとの話で、彼女の名前が挙がったが、療養中だったから話が流れただけで。そうだったことは内緒にしておこう。
心配であり、復帰が喜ばしいのは嘘ではないのだから。
彼女とは、彼女がこのPCIBに来た時の5年前から面識があった。
手始めの施設案内を任され雑用に走ったのは、いい思い出だ。
数十人ともいる新入職員の中に、彼女はいた。
ピクリとも全く表情は動かず、その瞳が何を映しているのかもわからない。
氷像のようだと称する者もいたが、それを聞いた時は言い得て妙だな、と思った。間違えではないのだ。
そんな浮いた彼女を当初は気にかかったものの、所属も違えば、性別も違う。仕事でかち合うことも滅多になく…知り合い程度の関係を続けていた。
それでもここ1、2年の彼女は、見かけると1人であることより、誰かが近くにいることが多くなったとも思っていた。
雰囲気に関しても分かりやすくなり、あぁ、いい兆候だな、さえ思いもした。
それを機によく声をかけ酒を共にしたことがあった。
これは大層驚いたことだが、彼女はすごく飲む。とても飲む。それはもう有り得ないくらいに。
あのままでは知り得なかったであろう面が、彼女本来の面が浮かぶのは良いことだ。
と。なんとなしに兄貴風を吹かせていた時。
あの夏が死ぬ事件が起こり、あの事件は、彼女の起きかけた面も殺した。
雪解けが。来ていた気がしたのだ。
しかし、復帰ぶりにあった彼女は。
ウラニア・ファウストは。
その身に再び冬を抱いていた。
春が死んだ日
(“ありゃあダメですよ。振り切ったふりをして、てんで前に向けてやしない。ふとした事で逆戻りだ“)
(そう言ったあのサボりがちの後輩の言葉が、身に染みてわかった気がした)
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「フリーマンさん。それで。ワタシにご用事では?」
「っあぁ、武器の改造を…」
快気祝いの挨拶をほどほどに、それと向き合ったカイルはしばし時を止めていたが、
冷めた声に言われてハッと我に返った。
「具体的にはどういったものをご要望で?」
「そうだな…」
彼女の春は、どこだ。
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