(我らが太陽をここに)
物心ついた時から、1人でいることが多かった。父親は幼い頃に病死したらしく、姿も、声も、朧げで。
そういやなんか遊んでもらった気がすんなぁと、飾られた父と幼い自分を見てぼんやりと思う。
そんな中で、大きな手に撫でられてたよなぁ、と言う記憶は、1番父の思い出として残っているものだった。
母は女手一つでオレを育てるため、昼夜問わず忙しく働いていた。
オレは母の迷惑にならないよう、いい子に過ごすように心がけていたものだ。
そんな母を喜ばせられないか、と力を入れていたのが勉強だった。
いや、正しく言えば違う。オレはきっと、褒めて欲しかったんだと思う。認めて欲しかったんだと思う。
ただ一言、「すごいねぇコル」だなんて言って欲しかったんだろう。
忙しい母にはそんな余裕はなく、いつもあのね、と話しかけては「今日疲れてるの。また今度にして。あなたも早く寝ないといけないわよ」なんて言われて、話すことなく今に至るが。
それでも勉強をやめなかったのは、単純に勉強が面白かったにすぎない。
新しいことを知って、そんで自分で新しいものを作る。創造する。
それは結構楽しいことだった。
昔馴染みのリシューと遊ぶ時は、お互い好きな本を勧めあったり、虹の根元には宝が、空にはラピュタが、なんて夢いっぱいのことを話したものだ。
特にオレが憧れたのは太陽だ。いろんなものを照らして、あったかくて、ピカピカしている。幼いオレが持った太陽はそんな印象。
リシュー以外大して話す友達も知り合いもいなかったオレは、そんなピカピカな太陽のような人に憧れた。
いいなぁ。いつも人に囲まれて、いつも楽しそう。オレもあの子みたいに、ううん、友達でもいいんだ。慣れたらなぁ。
と根暗なオレは願いながらも、その一歩は踏み出せずにいた。
そんなオレに転機が訪れたことがある。
その太陽みたいな子が、オレに話しかけてくれたのだ。
それになんと、友達になろうと言ってくれたではないか!
びっくりしたオレは諸手をあげて喜んだ。
彼が呼べばすぐ行き、彼が困っていれば助けた。
次第にリシューとは距離が空いてしまった。
それを少し悪いと思いながらも、幼いオレは太陽に近づくことに必死だった。
だからバチが当たったのかもしれない。
描いた夢は所詮夢。目の前にあるものも幻想。
太陽の輝きが水を反射して虹という幻を見せるように、オレは彼に騙されていた。
一年くらいだろうか。彼と行動するようになってそれくらい経っていた。
今思えばおかしいことはたくさんあった。やれ掃除を代わってくれ、やれ宿題をうつさせてくれ・やってくれだなんて。
友達というより都合の良い存在、今ならそう思える。
母の手伝いをするようになって、家事との折り合いがつかなくなりたびたび彼の頼みを断った。
するとどうだろう。みるみる彼は冷たくなる。
ぽかぽかと暖かな太陽だった彼が、ひんやりと冬を呼ぶのだ。
そうして、必死に伸ばした手は、空にある太陽に向かうために用意した翼は。
見事ばらばらと崩れ落ち、払われることとなる。
「なにチョーシのってんだか知んねーけどさ、俺別にお前の事友達とか思ってねーから!
お前勉強できるし、ぼっち気にかけてやったらせんせーからの評価いいし構ってやってただけ!
お前のことなんて俺が構ってやんなきゃ誰も見てねーからな!!!」
幼いオレの心に、それはなかなか突き刺さった。
あまりにもショックで、信じられなくて、その日は学校を早退したことを覚えている。
そんで、学校に…というより教室に通えなかったことも。
心配してきたのはリシューだけだった。
太陽の彼も、その彼の伝手で知り合った人たちも、誰も、オレのことなんて気に留めてやしなかった。
「コル、」
「り、しゅー……ごめん。……ごめん、リシュー、オレ、ダメだったぁ……」
優しすぎる昔馴染みが痛々しい顔をしてオレを慰めてくれていた。オレはただ、唯一の友の膝で泣くだけ泣いて、本当に情けない限りだった。
教室に行きにくそうにしたことを母は心配し、無理して行く必要はないわ、と言ってくれたが学校には行った。
保健室だけど。
そんで、小学六年生の時、能力が発現してそのまま学園への入学が決まって。
たいした話もしないまま、太陽の彼はオレの心内に残り続けている。
あの事件以来、わいわいと賑やかそうに…俗に言うパリピみたいな。あと偉そうな人間とか…苦手だ。
あれから数年経って、だいぶ思い出さないふりには慣れてきた。
大丈夫。あいつはここにいないし、ここで目立たなければ拾われることもない。
拾われることがないなら、捨てられることもないのだ。
適度に勉強は力を抜いて、就職だけは母のためにそれなりのところに就こう。
能力は楽しいから、色々遊んじゃってるけどまあ炎なんてどこにでもあるもんだし。
結局太陽なんてもんを生み出した時は、自分の愚かさに呆れたものだ。
大丈夫。静かに過ごして、静かに卒業する。喧しいところは極力避けて、目立たずこっそりいれば良い。
「オイ」
目立たず、こっそり、
「コル・レオニス・レギュラスだな?」
「……?はあ、そうっすけど」
「お前を獅子座副寮長に指名する。当たり前だが拒否権はねーからな」
こっそり、生きたかったんだが………????
我らが太陽をここに
(太陽自ら近づいてくる)
(こんなトラウマの再現、あるだろうか)
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