(3日目:豪雨の為撤退)
雨の公国への大規模侵略が行われたのは今から10年ほど前の話だ。帝国の貴族たちが帝王を唆し、雨の民たちの力を欲した。
始めは力を帝国のために、という口ぶりだったが、当然鎖国状態だった雨の民はその秘技を守るために断った。
そのため武の国、太陽の帝国の頂点に立つ晴れの帝王、ロドニー・トナティウは怒り心頭だった。
帝国には向かうものには制裁を。
そうして、帝国の侵略が始まったのである。
帝国は誇り高き国。帝国こそが世界の頂点に相応しく、その帝国の王であるロドニー陛下は世界の王である。
…当時、帝国の精鋭武力隊である晴天の騎士団にいた俺も、そう思っていたものである。
あの戦いで戦場を駆けるまでは。
「ち、雨のせいで足元がぬかるんで、動きにくい…!これも噂の雨の民にのみある天候操作の力、ですか」
鎖国していたからと言って甘く見ていた、と小さく舌打ちをする。
平和ボケしているかと思いきや、雨の民たちはそれなりに騎士団と渡り合っていたのである。
(それでも数で圧倒的有利なのはこちら…対して強いわけでもない。
部下たちがやられたのは…確実に油断が原因…)
しかし見事に戦力を分断されてしまった、と俺…晴天の騎士団、ソルディア部隊第3席、アルファルド・アデレードは溜息をついた。
(面倒ですね…これでは何かあった時の伝令が…)
雨で視界も悪い。今の戦況は一体どうなっているんだ。
侵略が開始されてかれこれ3日…この国は保った方である。
(一日目は大雪、二日目は嵐…すべて天候不良での撤退…。
広範囲へこの天候操作を行おうとすると時間がいるのか大体昼すぎ〜3時あたりに発動…。
今は昼前…でかいのを始める前の時間稼ぎでしょうか、この雨は…)
いい加減時間を取られすぎるのも困る事態が起こる。
騎士団の方も徐々に負傷者が増えている為だ。
その時草の動く音がして振り向く。
見ると既に剣を振りかぶった女。
「この、帝国の犬め!!!」
「……」
これは素人の動き、と思いつつ俺は冷静にその剣を受け止め、斬り返した。
短く悲鳴を上げて女は倒れる。
「思った以上に深くいってしまいましたね…。
まぁいいか。刃向かうものはすべて切り捨てろとのご命令ですし…。
何人かは既に捕まえているらしいですしね」
白い団服に散った血を見て溜息をつく。
白い団服に赤い血は異様に目立つ、しなんだか自分の髪色と似ていて好きではない為だ。
「既に泥まみれですけどね…」
頬にピリッとした痛みが走り、少しこする。
「おや…」
よく見ると手袋にも血がつき、どうやら少し斬られていたようである。
水たまりの中に転げる女を一瞥し、すぐに視界から外した。
「とりあえず合流しなくては…」
歩を進めると、あの女が転げていた方向から泣き声が聞こえた。
手を剣に添え振り返る。
居たのは14歳くらいの子供である。
「お前、が…っお前がああぁああ!!!」
母親のそばに転げていた剣を掴み、子供は俺へと向かってくる。
「死ねぇ!!」
同時に、子供は倒れた。
「怒らないでくださいよ。自業自得じゃないですか」
そう、帝国にはむかったのがそもそもの間違えなのである。
血のついた剣を一振りし、鞘におさめる。
「そう、自業自得なんですよ…」
でもなぜだろう?このどこか、つっかえる気持ちになるのは。
3日目:豪雨の為撤退
(間違ってない、間違ってない…)
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