(黒き太陽、地に落ちる)
「やあ、レギュラスくん。よく来てくれたね。今回君に、害獣駆除をして欲しくて。
最近手のつけられない人食いの獣がいてねぇ。困ってるんだ。君の炎で是非焼いていてほしい」
黒い獅子で。その特徴で一瞬よぎったのは、学生時代心底毛嫌いした寮長だった。
心底毛嫌いしながらも、こうやって記憶に焼き付いて消えない、ギラついた光の様な男。
いいや、とオレは首を振る。
あの人がそんなザマになんてなってるものか。地球がひっくり返ってもありえねぇ。
だなんて思いながら、面倒なことを任されたものだと息を吐く。
こんな話は聞いていない、と学園卒業後の進路に慄いた。
自分が望んだ静かな生活とはほど遠い、戦場の毎日。
能力を示さなければ淘汰されるのはこちらで、否応なくオレは周りが言う、出世街道というものを歩んだ。
作って、燃やして、壊して、作って燃やして壊して。
数多の物を、命を、焼いて、たまには自身の何かを燃やして。
はて、オレは。この能力でこんなことがしたかったのだろうか。
生み出した炎の鳥で、こんなことがしたかったのだろうか。
と正気に戻りかけては、それに蓋をした。
正気に戻ってしまえば、狂ってしまうのが目に見えていたからだ。
だからオレは気付かないふりをする。
気づいていないことにして、ただひたすら投げられたことをこなしていく。
そんな折に舞い込んできたのが、件の“害獣駆除”だったのだ。
---------------
そんなことが、遠い日のことのように感じながら、コル・レオニス・レギュラスは顔をしかめた。
目の前にいるは、噂の人食い獅子。
真黒の毛並みを、鋭く光る目を、彼は見間違えるはずがなかった。
心底苦手とし、心底遠いものと感じたもの。
焼きついて、こびりついた、鮮烈な、
「……ッざまあねぇなッ」
絞り出すように彼は声を出す。
信じたくないと手のひらを力強く握りしめる。
されども、目の前にあるは真実だ。
「何やってんすか、あんたってやつがよ…!!
情けねー姿、晒してんじゃねーですよ…!!!」
グルルルと理性のない獅子が低く唸る。
そうして、コルを食わんとばかりに飛び出した。
「……ッ『我らが太陽をここに(アイウィルクリエイト)』ー…!」
見間違えるはずがない。
あれは輝かんばかりの太陽だったはずだ。
この様に醜く、地に落ちた様な存在ではなかったはずだ。
コルは、何かを堪える様にその手に小さな太陽を生み出したのだった。
topへ