(アナタの記憶が無くなった日)
「ただいま帰りました」ガチャリと玄関の扉をあける。
いつもならおかえり〜、と同居人の男がひょっこりと顔を覗かせるのだが、反応はなく部屋はしんとしていた。
「…?サレナさん?」
おかしいな、と思いながらコルは足を進める。
いつも基本的に先に帰るのは、サレナだ。
遅くなるなら、朝のうちにいうか、何かしら連絡が入るはずだが、そんなものはない。
首を傾げながら、リビングに続く扉を開けたところで、コルはぴしりと動きを止めた。
「サレナ、さん?」
そこには倒れているサレナがいた。
その体はピクリとも動かず、少し見えた顔はしかめ面だ。
コルは持っていた荷物をどさりと落とし、慌てて彼へと近づいた。
「サレナさん?サレナさん、…っサレナ、」
息はある、心臓も動いてる。何があった?とコルはサレナに声をかけながらぐるぐると考える。
揺らしたらまずいかもしれない、と揺らしはせず状態を確認し、そうだ救急車、と思い至ってスマホを取り出したところ、「ん゛……」と小さく声が聞こえた。
「サレナさん?目が覚めましたか?何があったんすかっ?」
ゆっくり開かれた目にコルは安堵しつつも、心配のあまり立て続けに質問をしてしまう。
目を覚ましたサレナはというと、ゆるゆると起き上がり目を瞬く。
そうして、ゆったりとあたりを見渡し、最後にコルへと目線をやりじっと見つめた。
「……サレナさん?」
「………誰?」
こてんと傾げられた顔は、キョトンとした表情でそう言った。
「は?」
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