(さて、間違えていたのはどちらか?)

「お前何人やった?」
「数なんて覚えてねぇよ。人数は無駄にいるんだな、あの国」
「俺なんて公国の姫さん捕まえたんだぜ!」
「えっすごいなお前!??」

わいわいと若い団員たちが自分の手柄の自慢をしあっている。

「頭の悪い会話……」
「アルファルド」
「騎士団長」

前からやって来た男に名を呼ばれ、敬礼をする。
黒い髪をすべて後ろへと流し、鋭い目を持つ威厳のある男…我らが騎士団長、ライオネル・ソルディアその人である。

「何か御用でしょうか」
「捕まえた雨の民の見張り役を頼めるか?」
「はっ構いません。了解いたしました」
「……」
「どうか、しましたか?」

若い奴らの方を見たままである団長に声をかける。

「…いいや。帝国はこの馬鹿げた行いをいつまでする気なのかと思ってな」
「…団長は、帝王の判断が間違えだと?」
「だってそうだろう?罪のない国を蹂躙し、力で全てを奪う。帝王は暇つぶしの一種としか思っていない」
「帝王に逆らったことが罪なのでは?」

するりとその言葉を吐くと、団長は少し目を開き、一瞬だけ悲しげな表情をした。

「アルファルド。お前は賢いやつだ。お前なら、分かるはずだ。
この戦争がどれだけ愚かな行為なのか。
…一番愚かなのは、そう思いつつも、反抗ができない私だが、な。
では先ほどのこと、頼んだぞ」
「はい」

立ち去る団長を見送り、牢屋の方角へと俺は足を進めた。

(愚かな、行為…)

どくどくと心臓が鳴る。
どうしてだか、心臓の音は早くなるばかりである。

(…っ愚かなものか。陛下が、陛下が言うことが、全てだ)

俺が見張りにあてられたのは、先ほど噂されていた雨の公国の姫、エシュー・ヴェレーツェである。

女は窓辺に座り、虚ろに外を見つめている。
時にすすり泣く声が聞こえた。

「お…かな……」

夕食を牢の中へ入れた時、女が何かを呟く。

「愚かな太陽の、民たちよ…この愚行を、我々は許さない。世界樹は、見ている…いつか貴様らに、災害が降り注ぐ…。
忘れるな…このことを…忘れるな…殺した民を!!!
忘れるな!!!忘れるな!!!!お前たちは!!!いつか!!!不幸のどん底へ落ちることになる!!!」

憎しみのこもった声で言い放たれた言葉と、突き刺すような目に少しばかり慄いた。
まるで今すぐにでも食い殺してやると言わんばかりだった。

「それまで私は、お前たちの滑稽な姿を見ていることにするわ」

そして不気味に笑った女に、俺は恐怖を覚えた。

どくどく、どくどく。

心臓は、鳴り止まない。





さて、間違えていたのはどちらか?
(そんなの、そんなの、雨の……)
(本当に?本当に?)
(帝国が正しいだなんて言い切れる?)

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