(償いきれないのなら背負うのみ)
4日目の終戦間際、俺はひたすら民にあわないように戦場を駆けていたが、出くわさないと言うのは無理な話で、また何人も殺してしまった。途中で出くわした男はとても強く、危うく殺されるところで、目を潰して逃げた。
あの憎悪の目は忘れられない。
公国全体に侵略が完了したところで、終戦。
残された公国民は見世物で殺されるか、あの力を使わさせる為に捕虜として捕まえられた。
他に生きているかは、もうわからない。
騎士団の損失も大きかったが、公国の惨状の方が凄まじかった。
木々は倒れ、人々の死体は転がり、初期の面影はどこにもない。
うっと吐き気がこみ上げ、落ち着かせる為に座り込んでいると、幼馴染のフォトスフィアより、団長が殉職したことを知らされた。
『不幸のどん底へ』
あの時の女の声が、頭の中でリピートした。
その後事後処理に追われ、団長を含む他の団員の弔いをし帝国に帰還した時は大手で帝国の民達は俺たちを迎えた。
まるで俺たち騎士団が、正義の鉄槌を下したかのように。
他の団員が笑って手を振っている中、俺は一人うつむいていた。
次の団長にはフォトスフィアが選ばれた。
あのはっきりしない女がなんで、と思ったが、とりあえずは様子を見ることにした。
もしかしたら何か変えてくれるかもしれない。あれだけ団長を慕っていたのなら、と淡い期待も抱いていた。
帝国がこのままでいいはずがない。
…そんな期待は、結局無意味だったのだが。
フォトスフィアは貴族達のご機嫌を伺うだけだった。
八方美人な幼馴染に、結局貴女もそんな人なのですか、とがっかりした覚えがある。
副団長の解雇が決まった。どうやら貴族達にブチ切れたらしい。
亡くなった団長をバカにされて言い返したらしい。
元からサボり癖があった人の為か、他の団員達はそこまで気を止めず、厄介な人が減ってラッキーだなとかほざいていた。
殺されないだけ、もしかしたらマシだったのかもしれない。
その辺りで俺は、騎士団を出ることを決めた。
「個人の事情で大変申し訳ありませんが、騎士団を脱退いたします。今までお世話になりました。そして永遠に、さようなら」
今までソルディア団長が座っていた席にフォトスフィアが座っていることに居心地の悪さを感じながらも、辞表を出し礼をしてすぐさま部屋を出る。
「ル、ルーファ!??」と呼ばれた気がしたが止まらない。今の幼馴染の八方美人な姿には辟易する。
…心底蔑むことができないのは、俺も愚かだったからか、それともこの、フィーアを好きだと言う気持ちが捨てきれないからか。
どちらにせよ、もうこの国には居たくない。
荷物も纏めたし、今日中にでよう。
『結婚する気はありません。貴方のような奴が選んだ娘なんてたかが知れてる。私は雪の大国に行きます。二度と帰りません』
『親子の縁を切る?どうぞ、お好きに。万々歳です』
(親とここに向かう前に散々揉めたがどうでもいい。
あの家は前から好きじゃなかったが、今はもうダメだ。血が繋がっているとも思いたくない)
荷物を取りにだけ家へと戻り、今だに止める親の言葉を振り切り家出た。
…殺されるだろうか。裏切り者として。
それはそれで、俺の人生はそこまでだったと言うことだとでも思っておこう、と目的地、雪の大国へと向けて旅立った。
心残りは何もない、全部捨てよう。
そう思ったが、捨てきれないものはやはりある。
(フィーア、アルバ王子…)
あの八方美人は一緒に連れ出せばよかったんじゃないのか、あの国に居させてはダメだったんじゃないのだろうか、それに、王宮の隅に居た王の愛人の子…アルバ王子…あの子は、あそこに居て、大丈夫なのか…
いろんな考えが巡ったが、結局は国を捨てて逃げるんだ。
あの二人にそれを強要することはできない、と思った。
「…さて、とっとと出ましょう。こんな国」
あとはどうとでもなりなさい。
もう俺には関係のないことです。
償いきれないのなら背負うのみ
(しばらく悪夢にうなされ続けた)
(忘れるなと言わんばかりに、)
(俺はあの戦場に立つ夢を見る)
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