(それは一体いつだろう)

「アルファルド。おいアルファルド」

声をかけられてすぅ…とアルファルドは意識を浮上させた。
ひんやりとした空気を認識し、ぶるりと身震いする。

「寒い…」
「だろうな。そんな薄着でうたた寝なんぞしておるからだ」

この声は真白の学長、ヴァイツ・テロルのものである。
バカめ、と罵倒されつつアルファルドはゆっくりと体を起こし、伸ばす。

「おはようございます」
「あぁ。…悪い夢でも見ておったのか?」
「え?」

ちょんちょん、とテロルが自分の目元を指したことにより、アルファルドは自身の目元に涙が流れていることに気づく。

「あぁ…はは。
……夢を、見るんですよ。あの時の夢を」
「…雨のか」
「はい…。今でもあの女…エシュー姫の声が耳から離れません。
俺はいつか…大きな罰を受けます」

涙を拭いながらうっすらと笑うアルファルドを見て、テロルは少し眉を顰める。

「お前、囚われすぎではないか?
確かにお前達がやったことは、許されることじゃあない。
罰せられて当然だ。
だが、少しは自分を幸せにすることを考えたらどうなんだ?」

視線をテロルへと向けていたアルファルドは、今度は眉を下げて困ったように笑う。

「…俺は、幸せにはなれません。なる気もありません。
俺はそれだけのことを、しました。
多くの罪のない人たちの未来を奪っておいて、自分だけが、幸せを掴むわけにはいきません。
…髪は、呪いのようです。染めてもすぐ戻ります。忘れるなとでも、言うようです」

同じなんですよ。と呟きながらアルファルドはそばにあった剣を撫でる。
騎士団時代から使っている剣だ。

「俺は俺の髪が嫌いです。まるで、あの時と同じです。…白い団服が、鮮血に染まる、あの時と、同じ……」

ガタンと立ち上がり、持って来ていた本を元の位置に戻そうと歩き出す。

「アルファルドっ」

テロルは焦った声で止めた。
止めないと行けない気がした。
今にも、この男が消えてしまいそうだったから。

「…ふふ、大丈夫ですよ。幸せになるつもりはありませんが、死ぬ気はないです。
いつか叱るべき罰が来て死ぬか、報復されて死ぬか。それが俺の最期です」

にこり、と再びアルファルドは笑う。

「それまではこの国にいて、この国の為に尽くしましょう」

それでは、というと、アルファルドは奥の方へと消えて行った。

「……あやつ…」

納得はいかなかったが、あのパターンに入ると言うことは聞くまい、と数年の付き合いで把握しているテロルは深追いすることをやめた。

(いつか、解放される日が来ると良いが…)





それは一体いつだろう
(早く、早く。殺してしまえ)
(それだけのことを、俺はした)

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