(どこかで君を求めたから)
日本公帝国軍暗殺部隊に所属する八千代京子は森の中をかけていた。いつも通り任務を終わらせ帝国軍の本部へと向かって帰還していたが、その道中に柄の悪い連中に襲われてしまったためだ。
どうやら帝国軍に恨みを持つものたちの犯行らしい。
「!?」
森を抜けたと思ったら前方にも人。
京子は完璧に囲まれてしまった。
「誰だ貴様らは…黒軍でも赤軍でもない…?他の賊のものか…?」
キッと男共を睨みつけるが、リーダーらしきものは「やれ!!」と声をあげ、男たちは京子へと向かってきた。
「敵ならば戦うのみだ…!」
薙刀を握りしめ、京子は構えた。
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インペラトルからの招集もなく、ふらりと歩き回っていた無色シロヤは鉄同士のぶつかり合う音に足を止めた。
「……なんだ?」
(男共に囲まれた女…?)
目線の先には複数の男に囲まれ攻撃を受けている女がいた。
その囲まれた女にシロヤは見覚えがあった。
「あの女…この前の帝国軍のやつか…」
思い出したかのようにシロヤはつぶやく。
女の正体は、先の帝国軍との戦いで戦闘した相手だった。
ついでに、結局時間までに殺せなかったことを思い出し、シロヤは舌打ちをする。
京子はというと、戦うも人数が多すぎて裁ききれず、一人の攻撃を受け止めたところで別の方向から腹に蹴りを入れられよろけた。
「うっ…!」
ガシャン、と薙刀の落ちる音が響く。
腹に蹴り入れられたのを見て、「ちっ…」と再び舌打ちをしたシロヤは衝動的に斬馬刀を抜いて目の前の団体に向かって駆けた。
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賊の男はチャンスだと言わんばかりによろけた京子目掛けて刃を振り下ろそうとする。
(やられる…!)
男が振りかぶったと同時に、死を覚悟して京子は目をきつく閉じた。
だが、待てども刀は振り下ろされない。
「…っ?」
不思議に思いそっと目を開けると、
真っ黒な姿をした背の高い男…シロヤが賊の刀を受けていた。
「多勢に無勢とは…いささか女子相手に卑怯…というか、貴様らどこの軍のものだ。
…見るからに、どこの者でもないようだな…賊か?」
きいんっと男の刀を跳ね返してシロヤは相手を睨み付ける。
(都市部以外の場所は相変わらず治安が悪いな…)
「…立てるか、女」
シロヤは男たちを見据えたまま、ぼそりと足元に座り込む京子へと尋ねた。
「あ、ああ…」
尋ねられた京子は今だ驚きを持ちながらも答え、よろよろしつつも立ち上がった。しかし、まだ足元は覚束ない。
「なんだ貴様ァ!帝国軍の輩じゃねぇな!?てめぇに用はねぇんだ、どけ!」
賊のリーダーらしき男は、シロヤに邪魔をされたのが気に入らないのか、シロヤに向かって斬りかかろうとする。
それを聞いたシロヤは、はぁ、と一息付き、
「帝国軍が目的か…正直言って敵軍がどうなろうとどうでもいいが…今はこの状況が気に入らない。
ので、どかない」
と言い、再び男たちの斬撃を受け、攻撃してきた男を斬る。
「死にたい奴からかかってこい」
「てめぇ!なにしやがんだ!お前らやっちまえ!」
賊の男らは挑発され、シロヤに襲いかかる。
よろよろと立ち上がった京子を横目で捉えていたシロヤは賊の攻撃を受けつつ少しばかり思案する。
(走れるか微妙だな…)
この場を一旦抜けるためには駆け抜けるしかないとシロヤは考えたが、京子の今の状況では走れないとシロヤは判断した。
そして、
「…失礼する」
「わっ…!?な、ななな何をしてっ…」
シロヤは腹に腕を回して片手で京子を持ち上げた。
そのシロヤの行動によって京子は顔を真っ赤にして暴れようとするが、シロヤが「頼むから暴れてくれるな」といい、ぐっと力を込めて固定すると「う、うう…」と少しばかり唸り、京子はおとなしく暴れるのをやめた。
「このまま広いところへ行くぞ。
ここでは分が悪い」
そういい、京子を抱えたままシロヤは飛び出す。
「邪魔だどけろ…!!」
走りだし前に立ちはだかる奴らを切り倒して進んでいくと同時に、外出時には耳にはめている無線で、ある人物に連絡を取る。
「クロエ、少し手を貸してくれ」
シロヤの従姉妹である無色クロエだ。
『なんどすか突然…』
唐突な従兄弟の頼みに連絡を受けているクロエは説明を要求したが、賊の「うわああっ!?な、なんだコイツ…!?」「怯むな!数で押せ!!」という声が届くとともに『すぐ行きます』とだけ言って会話を切った。
(クロエがいればなんとかなるだろう…最悪、この女も復活するはずだ…)
追い払うには充分、と思い次々と湧く賊を斬る。
「次から次へと湧くな雑魚が!!!」
長い斬馬刀を一閃すると、広範囲の賊が斬られて倒れていく。
「貴様らが数で押すなら…こっちもそれ相応で相手してやる」
ひらかれた場所に出ると、シロヤは足を止め、その場に京子を下ろした。
「っ?なんのつもりだ…!?」
オーラに圧倒されたのか、若干怖気づきつつある賊たちは顔をしかめた。
「私“達”に勝てると思うなよ…!」
シロヤがそのセリフを吐くと同時に、
ザンッとシロヤの横に赤茶色の髪の女が現れる。
…シロヤの従姉妹、無色クロエだ。先ほど連絡したばかりだというのに、随分到着が早い。
「この状況はなんどすか…それにこの女なんどすか」
京子を視界に捉えると、すこしクロエは嫌そうに眉を寄せた。
「説明は後だ。治療してやってくれ。
俺はあの賊どもを殲滅してくる」
「お前らやっちまええええ!」
端的にそうシロヤはクロエに告げるとダッと襲ってくる賊の群れに向かって飛び出す。
「ちょ、行ってしもた…。
あんた日本公帝国軍…白軍の子どすねぇ」
京子の服装を見て、「なんで赤軍が白軍の子ぉ助けるん。わけわからんわ」とクロエはいった。
「う…?君もあの男の仲間か?赤軍…?」
「そうどすえ。なんでまた白軍なんて…しかも女…」
変わらずブツブツとクロエは何か文句を言っているが、シロヤに頼まれた通りに、テキパキと京子を治療していく。
「……こんなもんやろか。
動けるようならあれ倒すの手伝ってください。
元々自分の敵なんやろ?」
「ああ…すまないな…」
「…無理なら…邪魔にならんようどこかで隠れてはったらいかがですか?」
嫌味を交えて鼻で笑うと、クロエは戦いの渦へと混ざって行った。
京子も少しふらつきながらも立ち上がり、クロエの後に続き、戦乱の中へと向かった。
「こ、こいつなにもんだ...!?赤軍…インペラトルか!?くっそ....!」
シロヤを相手取っていた賊たちが圧倒的な強さに怯み始めだした。
「インペラトルは関係ない。
インペラトルは一人一人が組織だ。
今私は…一個人でお前らを倒している!
…恨むなら、私か愚かな行いをしている自分たちを恨むんだな!!」
ザンッと再び斬撃を繰り出す。
シロヤは返り血で赤く染まっており、顔についた血をぐっと拭うとともに、京子が混ざったことに気づいた。
「大丈夫なのか」
敵を倒しつつシロヤはそう短く尋ねた。
「ああ、治療してもらって大分楽になった。
その…すまない」
京子も敵を倒しつつ、申し訳なさそうに言葉を返す。
「礼ならクロエに言ってやれ」
治療したのはあいつだ、と端的にシロヤは言った。
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「うっ...こいつら..!お、覚えてろよ!」
敵わないと判断したのか、雑魚にありがちな言葉を吐き、初期と比べ、随分人数が減った賊が退散していく。
「行ったか…」
ごし…と頬をこすると、クロエがそばに来て、拭くものをよこしてくれたので、礼を言いつつそれを受け取る。
「結局なんなんです」
一区切り付いたのだから早く説明を、と言った威圧を込め、クロエはシロヤへと尋ねる。
「…賊がこの女を大勢で襲ってたのが気に食わなかったんで手を出しただけだ」
「…へぇ?わざわざ帝国軍の女を…」
「帝国軍に制圧されたチンピラか何かか…人迷惑な奴らだった…」
京子はそう一人で呟いたが、「あぁらそれははた迷惑なはなしですなぁ…」とクロエは聞こえたらしくにこりと反応した。
「そうだな…赤軍にはこういう奴らはこないのか?」
反応を示したクロエに京子はそう聞き返した。
「そうやねぇ…赤軍は基本基地なんてものはありまへんからなぁ。
招集されないと集まらん人ばっかやし。
その点拠点がある人は大変やね?」
そうクロエは答えるとまだニコリと笑う。
「そうなのか…帝国軍はよく標的にされやすいのだ。
その結果このザマで...私はまだまだ修練が足りないようだ」
京子は相手の変わらない笑顔を少し不気味に感じつつもクロエとの会話を続けた。
「政府軍やからなぁ…恨みを持つものも多いやろ。
そうやねぇ、もっとつようなった方がええんやないですか?」
クロエも不気味に感じられていることがわかったのか、面白がるようにくすくす笑った。
「ああ、もっと強くなれるように努力する」
京子は笑っているクロエを少し睨みながらそう返す。
「うふふ怖いわぁ…睨まんでくれはります?
……ところでシロヤぁ。
この女を殺してええですか?シロヤに近づいた近づいた近づいた近づいた近づいた近づいた…」
シロヤを自分の所有物であると思っているクロエは、京子がシロヤの近くにいたことがどうやら気に入らなかったようだ。
瞳孔の開いた目で京子を見、両手には武器である鞭刀を握りしめている。
「…だめだ」
今にも襲いかかりそうなクロエの顔を片手で抑え込み、シロヤは止める。
「…シロヤ、だったか?君は何故敵である私を殺さないのだ?」
シロヤに抑えられているが、狂気じみたオーラを放つクロエを警戒しつつ、問うた。
「…たしかに、あんたは敵、だ。
しかも殺し損ねた。
……だが今は任務外だ。
困っているやつを助けて何が悪い。
…別段今は白軍と赤軍の関係も微妙だが落ち着いているしな。
…殺す理由もあるまい」
だからだ、とシロヤは言い、ふう、と息を吐く
「そうか...ありがとう。
君がいなければ賊の奴らに殺されているところであった。
おまけに人まで呼んでくれて、君は...優しいのだな」
京子はシロヤに向かって微笑みつつ、そう告げる。
「流石にあの人数じゃ呼ばざるを得なかったしな…」
さすがに痛手を負うのはごめんだ、とシロヤは続ける。
「…優しい…か、そんなこと初めて言われた」
「殺されかけたところを助けてくれたのは紛れもない君だ。
この恩は忘れない」
誠実なまっすぐな目をしていう京子にシロヤは少しばかり目を伏せる。
「…恩を着せるつもりはない」
「いつまであて抜きで喋ってはるんです?寂しいわぁ」
疎外感のあったクロエはいい加減我慢ならなかったのか、会話に割り込んできた。
そして殺すぞこの雌ブタ、とドスをこめた声で小さく言う。
小さい声が聞き取れたのか、化けの皮を剥がしたかこの化け狐め、と思いながら京子はクロエを睨んだ。
「おお怖い睨まんといてください」
睨まれたことに気づいたクロエはわざとらしく怖がり、そう言った。
「…ところで君ら2人は恋人なのか?」
唐突な質問に二人ははぁ?という空気を出す。
「そうなんですよぉ、あてららぶr「嘘を吐くな、…従姉妹だ」
真っ先に答えたのはクロエで、それをシロヤは遮った。
え〜ええやんいけず〜とクロエはシロヤの腕に巻きついたままブーブーと文句を言うがシロヤには流される。
「ん、恋人ではなく従姉弟か そうか…」
その答えを聞いて、京子は何故だか無意識に少し微笑んだ。
「……もういいか。長いこと違う軍の私たちが一緒にいたら怪しまれる」
少し眉間に皺をよせたシロヤは、京子へと投げかける。
「ああ、気をつけてな…」
「いくぞクロエ」
「はぁい。ほならさいなら。
精々帰り道に襲われんようになぁ」
くすくすくすとクロエはまた笑う。
二人は踵を返すと、京子に背を向けて歩き出だした。
京子は去っていく後姿を見送り、自分も帝国軍の基地に足を向けた。
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「…珍しいことしたんやねぇ」
「……少し気になっただけだ」
「……そぉ…」
どこかで君を求めたから
(巡り合った運命)
(動き出す針)
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