(一歩、一歩、進んで行って)
「は〜〜い皆のアイドルトゥルエノちゃんが来たのですよ〜☆」朝、家の扉を開けてスウェイはゲンナリした。
後ろに広がる雪景色と彼女の金髪がとても眩しい。
あれからよくわからず駆けて家まで戻り、そうだ寝ると治るかもしれない!とバカな発想に至ったスウェイは何も考えずに眠りに入った。
そして叩き起こされたのである。この自分のペースでしか動かない女に。
「ブロンデーのじじいの奴に様子を見てくるように頼まれたんですよ〜今日はなんとアステリまでいるのですよ〜ほ〜ら見てくださいアステリ寒そうです〜入れてあげてください見捨てるんですか〜?」
この先ほどからマシンガントークをかましていて自分だけちゃっかり防寒しているのはトゥルエノ。
スウェイが所属している(今は家出中の)シビルファミリーの一員である。
自称皆のアイドルを主張している少し電波気味の女だ。
見た目の割にはだいぶ年をくっているらしく
「良くない事を考えているのはこの頭なのです〜?☆」
「な、なにも考えてないヨ」
『さ 、寒い…』
「あーもう、入るといいヨ!!!」
そしてずっと黙ったままで震えているのはアステリ。
話すときは大体テレパシーで口を開くことはなく、動くことも少ない過去や未来を見ることのできる女だ。
シビルファミリーの重要な役割を担っている。
「それで、なんの用事ヨ?ワタシまだ、そっちに戻る気ないネ」
「いつもの体調チェックなのですよ。
あれでもジジイ達心配してるのです。
変わりないです?」
特に、とトゥルエノの質問に答えようとしたが、昨日のことが頭をよぎる。
しかしわざわざ話す必要性も、ない。と思い「何もないヨ」と首を振っておいた。
しかし暖をとっていたアステリがワタワタと動き出し、スウェイを指差しながらスウェイを見たりトゥルエノを見たりしている。
「うん、なにかあったですね?」
にっこりと笑ったトゥルエノとこくこくと頷くアステリにぐっとスウェイは唸った。
(この組み合わせ、前々からとても苦手よ…妙に感のいいトゥルエノと、過去を覗けるアステリ…最坏…)
のがれることはできないと感じ、
スウェイは昨日あったことを二人へと話した。
「なるほどですね〜」
『スウェイちゃん…』
「なっなんでアステリ泣くヨ!??」
いい話聞いたとニンマリするトゥルエノとは違い、アステリはボロボロと涙を流していた。意味がわからない。
「いい青春おくっているのです。スウェイ激ニブですけど!」
「こ、これ、原因なんか知ってるのカ?」
「超簡単ですよ〜むしろなんでわからなかったのか不思議なのです」
ふふふ、と笑いながらトゥルエノは答えを求めるスウェイを焦らす。
「それは、恋。なのですよ!」
「はぁ??」
ふふんっと自慢気に言うトゥルエノとその横でアステリがパチパチパチと拍手をする。
「青春ですね〜いいですね〜トゥルエノも素敵な青春を過ごしていたものです」
「何十年前の話ヨばばあ」
「はい?」
「なんでもないネ」
「それにしてもスウェイが〜そうですか、そうですか」
ぐりぐりと頭を撫でるトゥルエノを何するヨ!!とスウェイは言う。
「これが貴女が探してた愛というものの一歩手前、なのですよ」
「そ、んなわけないヨ。津波は、ただの、いい友達で」
「友情からくる恋もあります」
「ありえないネッッそんな、そんな、ワタシが…恋、なんて…っ」
「スウェイは認めたくないのです?」
ズリッと後ずさるスウェイの両手をトゥルエノはとる。
「どうしてです?貴女が追い求めてたものですよ?どうにかして手に入れようとして、憧れて、憧れて憧れて憧れて憧れて…憧れていたものでしょう?」
「ちが…っ」
「いいじゃないですかよかったのです!これで貴女は一歩満たされたっ!
さぁこの気持ちをぜひ彼に伝えましょう!」
「不同っっ!!!」
ぶんっと腕をふり、スウェイはトゥルエノの手を振り払う。
「不同!不同!!違うヨ!!ワタシ…っ怖い…っ愛がわからない、恋がわからない、伝えたらどうなるの、今のままじゃいられなくなるんじゃないの…っ
嫌だ、失いたくない…っ無くしたくない…っ
津波はワタシの大切な友達!!
津波を失うのは、イヤ…っ嫌ヨ!!だから…っ違う!!恋じゃない!!」
涙を流しながら、スウェイは頭を抱えそう叫ぶ。
トゥルエノはその姿を静かに見つめ、アステリはあわあわと慌てていた。
「怖いのはわかります。不安になるのもわかります。
でもいいんですか?自分の気持ちに嘘をつき続けて。
これからずっとずっと、嘘をつき続けるのです?」
「それは…っ」
「貴女は今の自分の初めての気持ちを持て余しすぎて、どうすればいいのかわからなくて、考えたくなくて、思考を放棄しているだけです。
どこか心の隅で気づいていたのではないのです?」
「…っ」
「スウェイの意気地なし。トゥルエノお姉ちゃんはそんな臆病に育てたつもりはないですよ。ねっアステリ!!」
「あっえっその…っ」
唐突に振られてびくっとしたアステリは珍しく口を開きもそもそとなにか話す。
「私、が言えたことじゃないかも、しれないけど…嘘を、つき続けるのはとても、辛いと思う、よ。
あの、ね。私たち、家族、でしょ?」
しどろもどろになりながら、アステリは言葉を紡ぐ。
「きゅ、うになにヨ…」
「スウェイちゃんが困ってるなら、私たちは、助けたいし…出来ることをしたい。
立ち止まって、進めなく、なってるなら…背中を。押してあげたい。
それに、こんな可愛いスウェイちゃんを振った上、友達やめちゃう酷い男なんて、お姉ちゃん達が、サイコキネシスでこらしめてあげるから…っ」
「お前みたいな普段おとなしい奴がそう言うとガチで実行しそうだからやめるヨロシ」
珍しく笑ったアステリに少し恐怖を抱きつつスウェイは首を全力で左右に振った。
「一歩、進んで欲しいの。スウェイちゃんに」
「そうですよ〜ちょ〜〜っとさっきグイグイ行きすぎましたが、私も気持ちは同じなのです。
立ち止まって欲しくない。成長して欲しいのです」
「アステリ…トゥルエノ…」
「まぁ当たって砕けろと言いますし!!
砕けても砕けなくてもいい経験なので!!進んじゃいましょうよ!」
「ちょっとじんわりしたのがすぐ台無しになったヨ。
やっぱ面白がってるだけネ??」
「嫌ですね〜そんなわけあるわけないのですよ〜」
ケラケラと笑い家の中をくるくる回るトゥルエノに嘘つくな!とスウェイは言いながら追いかける。
アステリは埃が立つわ…とまたあわあわ。
「でもほんと、スウェイを泣かすようなオトコは見る目がないとして懲らしめてやるのですよ☆
カミナリビリビリです!」
「津波はそんな悪い奴じゃないヨ……」
「それも知っているのです!何と言ってもスウェイが好きになった人ですしね!」
「えぇ」
微笑ましく頷く二人に、スウェイは好き、というフレーズで真っ赤になる。
「おっゆでだこですね?真っ赤なのです!」
「本当ねふふふ」
「う…っうるさいヨーーーッッ!!!」
一歩、一歩、進んで行って
(気持ちは決まったです?)
(……まだヨ)
(もぉ〜〜!!悪あがきは良くないのです!!!)
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