(伝えた想い)

「告白といえばそろそろバレンタインなのですね〜。
ちょうどいいのでそこでズバッと言いに行きましょう!!」

数週間前に来たトゥルエノが最終的に提案してきたのは、バレンタインに告白というものだった。

最後まで嫌だ〜言いたくない〜と駄々をこねていたスウェイだったが、トゥルエノたちに丸め込まれたのと、トゥルエノたちに気付かされた気持ちが嘘をつき続けることでいつか後悔するのでは、と思い悶々としたままスウェイはバレンタインを迎えた。

「バレンタインがなにかは知ってるけど…あいつのことだから、女の人、たくさん来るんじゃ…」

想像しただけでズキっと胸が痛んだ。

「…思ったより重症ネ?ワタシ…」

胸を押さえながらスウェイは自嘲気味に笑う。

「マァ!?うまく今日会えるとは限らないし!??会えなかったらそれはそれで…いい…」

住んでいる雪山から街に向かって降りているスウェイは一人で空に向かって叫ぶ。
やはり現状を崩したくないという気持ちが大きい。
でも、

(もしかしたら、もしかしたら津波も…)

同じ気持ちであったりするのではないだろうか、と淡い期待を抱く。

(嫌われては、いないと思う…けど…
でもきっと、あいつの中でワタシはただの一人の友人でしかないヨ…。特別にはきっと、なれないネ。
…だって、ワタシ以上に素敵なヒトは、あいつの周りに…たくさん。…たくさんいるヨ)

団員やファンたちに囲まれる津波を想像して、ポタリと涙を流した。

「というか、あれから津波と一二回会ったけど、気づいた雰囲気、なかった…ワタシ、バレるバレないヒヤヒヤだったヨ…。
絶対っ鈍い…」

今日会えて告白したところで、果たして告白と気づくか、怪しいところだ。

トゥルエノたちから教えられて作ったチョコケーキを綺麗にラッピングして入れている袋に目を落とし、スウェイはため息をつく。

「どうせ、どうしたスウェイくれるのか!珍しいな!…程度しか言わないヨ」

ワタシもうまく渡せると思わないし…といつもの自分の調子を思い出しながらどうなるか不安だ…と一人落ち込んだ。

「当たって砕けるしかないヨネ!!ゴーファイト!!能努力我!頑張るヨ!!」

「スウェイ砕けるの?」

一人空に向かって拳を高くつき上げたところで、聞き慣れた声に名前を呼ばれてびくーーんっとスウェイは驚く。

「つ、津波…」
「よっスウェイ!珍しいな!出かけるのか?」

片手をあげてへらりと笑うのは、紛れもなく会えたら当たって砕けようとしていた人物である。

「ど、どうしたヨ。今日来る、言ってなかったネ」
「俺も行くつもりはなかったんだけど、えーとトゥルエノ?さん?にスウェイが用事あるから行ってやってくれって言われて」

(あのババア!!!!!)

トゥルエノが舌を出してウィンクしている姿が浮かび、スウェイは心の中で悪態をついた。

「違った?」
「ち、がくは、ない…ケド…」
「けど?」

心の準備がまだできていなかったスウェイは、もしあった時に言おうとしていたセリフが全て吹き飛んだ。
どうしよう、どうしよう、とグルグルグルグル頭の中が回りこんがらがる。

津波はというとにこりと笑ってスウェイの続きのセリフを待っている。

「っつこれ!!!」

じっと見られる視線に耐えられなくなったスウェイは、手に持っていた紙袋を津波に投げつける。

「うおっと」

どうやら落とされずきちんと受け止められたようだ。

「今日!バレンタインネ!??」
「あぁそういえばそうだな」
「津波にはっいつも世話になってるから!!やるヨ!!!
と、友チョコ!??いう奴!!!」
「えっ俺に?スウェイ優しいな〜」

ありがとう。と微笑む津波を尻目に、スウェイは違う違うコレジャナイ違うっと心の中で焦る。

うまく言葉にできない。いつも、いつも言葉にできなくて、津波が変わりに汲み取ってくれる。
どんなにキツイこと言ったって、わかってるよって、津波はいってくれて、言葉にできなくても、わかってくれないかって、

「スウェイ顔赤いけど大丈夫か〜?暑い?あっせっかくだからこれ一緒に食べようぜ!」

的外れなことを言う津波にスウェイはハッとする。

(これ、は。この気持ちは、汲み取ってもらえたらって、相手に、任せきりにするの、良くない…
ワタシが言わなきゃ、意味がないヨ!!!)

「…っ津波、は」

ぎゅっと手に力を込め、身体を震わせながらスウェイは言葉を紡ぐ。
いい匂いだとか言っていた津波も紙袋からスウェイに視線を戻した。

「とても、優しいネ。こんなワタシでも相手してくれるし…
最初は、お人好しでお調子者で、バカな奴だと思ってた、ヨ。
ワタシのワガママに付き合ってくれる、お人好しな、大バカ…」

「酷い言われようだな。俺は」
「でも」

スウェイは顔を上げ、はははと笑う津波と目線を合わせた。

「素敵なトコロ、だヨ。
サーカス見に行って、津波の素敵なトコロ、さらに知った。
津波、サーカスしてるすがた、とってもカッコよかったネ。
…こんな素敵なヒトがワタシを相手してくれるなんて、さらにお人好しだと思ったヨ。
本当、お人好しでバカで…ワタシは、
そんな津波が大好きヨ。
特別な意味で」

にこり、とスウェイは笑う。
津波は目を見開いたまま無言だ。

「…返事は期待してないヨ。
あまり気にしないで。ワタシが言いたかっただけ。
…津波さえ良ければ、これからもワタシに変わらず接して欲しいヨ。…お願い」

「スウェ、」

「今日の用事はこれだけ!!!
抱歉!ごめんヨ。こんなことでここまで来てもらって!!気をつけて帰って。
ケーキ、いらなかったら捨てて!!
っワタシ、この後用事があるから!!じゃあ!!…サイチェン」

津波がなにか言いかけたが、スウェイは構わずまくし立て、来た方向へ走って戻る。



(言った、言った、言った…!!!)

「言っちゃった、ヨ…っ」


いろんな気持ちが同時に押し寄せて、目に涙の膜が張る。

「ちょっとこれは、しばらく、津波に会いにくい、ネ…ッ」






伝えた想い
(おかえりなのです。スウェイ)
(なんでいるの)
(一人で泣きそうだと思ったので)
(…っっ)
(スウェイは頑張ったのです)

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