(始まりは多分そこから)
ニィーベとユリアンさんの過去を想像してみた。あの店の主人が亡くなったらしい。事実かはわからない。が、帰ってこないということは、採掘の途中で……もはや真相は闇の中か。あの人が帰ってこない限りわかるまい。
さて、しかし惜しいことをした。少なからずあの主人の作るものは気に入っていたし、うちの両親も好きだったのだが。
「そういえば、直したぞ」
そういって寄越されたのはゴーグル。元々はあの主人に頼んで作ってもらったものだ。
まさか早々に壊して早々に主人ではない人物に直してもらうしかないとは。
くるりとゴーグルを一回転させ、直っていることを確認する。
あの主人の息子なためあって、手先は器用らしい。
「…ありがとう。よくできている」
この少年はこれからどうするのだろうか。
数年、両親に連れられたりひとりでお使いに来たりとここに通うことは多かったが、母親の姿を見たことは一度も…たぶん、ない。
こいつは多分、独りだ。
言われたお代を払い俺は店を出ようとする。
奴は何も言わない。
「〜〜〜」
いつもは気にしたこっちゃない、と他人に構うことなく我が道を行くが…今回はなんだ、割と縁あった人の息子だからか、ほってはおけない、よう、な……
あぁ、くそ、と心の中で悪態をつき、髪をぐしゃぐしゃとかく。
5つ下、か。
そして深い息を吐く。
「おいお前。飯ちゃんと食ってんのか」
振り返り泣きもしない息子に俺は問うのだった。
始まりは多分そこから
(っへっや汚ね!!!)
(掃除は苦手だ)
(マジかこの息子!!!)
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