(貴方が見えない)

※もし好きな人が見えなくなる病気にかかったら


いつもと変わらない日だった。
ただ違うのは、非番だから訪れたユリアンの店で、ユリアンの姿が見えなかったこと。

彼の定位置で、道具だけが動く。

なんで、どうして。

「ユリアン…?」

震える声で彼を呼ぶ。悪い冗談だ。
なにかの魔法か、いいや彼は魔法使いではない。
なにかの道具?薬?

「ユリアン、悪ふざけなら今すぐやめて、久々なんだから、姿を見せてよ」
「何もしていないぞ」

至極真面目な彼の声が響く。

「なん、じゃあ…なんで」

そういえば噂で聞いた。今、奇妙な病が流行っていることを。
聞いたことがあるので、一つ、好きな人だけが見えなくなる……

「うそ、」
「どうしたブランカ」

すいっと何かに手を取られた感覚がした。

「…ユリアン、私の前に、いる…?」

これは何かの悪い冗談だ、と思いながら恐る恐る聞いた。

「?いるだろ?」

その答えは私を絶望に突き落としたけれど。

「なんで…、どうして、やだ…っヤダよ、ユリアン…っ私…っ」



貴方が見えない
(見えないの、貴方の姿)
(ねぇ、ここにいるの?)

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