(このまま遠く離れるなんて)
あれから時過ぎてインペラトルと帝国軍が仲が悪化し、戦争していた。「...」
京子はいつもどおりに敵、インペラトルと戦っていた。
「…っつ」
「入った!!とどめさすぞ!!」
「わかった!」
そして、京子のいるところから少し離れたところで帝国軍5人ぐらいにシロヤは囲まれていた。
集中砲火を浴びているシロヤはボロボロで、今にも倒れそうだった。
気力で立っているといっても過言ではないだろう。
(…っ流石、日本公帝国軍…!一筋縄ではいかな…)
今までの戦闘で多くの攻撃を受けたために、血液不足でぐらりと視界が揺れる。
そのせいで地面に膝をついてしまった。
「…!あれは…!」
シロヤの存在に気づいた京子は走り出す。
いつかのシロヤのように。
「とどめだ!!」
帝国軍の軍人がシロヤに最後の一撃を繰り出そうとした瞬間、
京子が割って入りガキィン!と振り下ろされた刃を薙刀で受けとめた。
「…!?」
何とか応戦しようとしていたら敵のはずの白色が目の前に立っていて、しかも庇ってくれたためにシロヤは目を見開き驚いた。
「…また会ったな、シロヤ」
京子は仲間のはずの相手の刀を振り払いながらシロヤの方をちらっと見た。
「あ、んた…なんで…!!!」
「おいお前どういうことだ!!!」
「あれ3年の八千代じゃ…」
その場にいた京子以外の帝国軍の軍人・生徒は、京子の行動の意味がわからず動揺するとともに憤っていた。
「恩返し、だ。」
少し目を細めて微笑む京子に、シロヤはさらに目を見開き、すぐさま細めた。
「…っ恩を着せたつもりはないと言っただろう…!!」
屈辱だという色を滲ませ、息を切らせながらシロヤは言い、京子を睨みつけた。
シロヤ自身も京子の行動の意味がわからない。
なぜわざわざ、しかも仲間の前で自分を助けたのか。
恩返し?それで自分の身を危険に晒すのか、意味が分からない。と。
「…立てるか?どうやら君に付き添うことは出来ないだろうから、すまないが逃げてくれ。
もう君と会えないと思うが私は「八千代、ちょっと来い!話を聞かせてもらう!」
京子の言葉と重なるように一人の帝国軍の軍人がどなり京子の腕を引き連れて行く。
「…!っ待て…「シロヤ!!お前大丈夫か!」
それを引きとめようとゆらりと立ち上がったところで仲間の赤軍が到着し、崩れ落ちかけたところで支えられる。
「お前、この状況なんだ…!?
なんであの日本公帝国軍の女、仲間に引きずられてんだ!?」
「そんなことより救護班だろ!!出血がひどい…!!
あのよくわからん女のことは諜報班に任せればいい!」
「そうだな…!おい、連れてくぞ!!死ぬなよ!!」
「まて…俺、は…」
自分も運ばれそうになる中、手を伸ばしたが届くはずもなく。
シロヤはゆっくり気を失った。
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数日後
【日本公帝国軍基地】
査問室では上層部の人間が京子を査問にかけていた。
軍内ではすでに帝国軍…京子がインペラトルの人間を援護したことは噂で広まってしまっていた。
「なぜインペラトルの人間を援護したんだ!」
「お前はインペラトルのスパイだろう!?この裏切りもの!
あそこは実態が全然わからんからな…!」
「っ……裏切ってなど…は…」
京子はインペラトルにも、帝国軍にも迷惑をかけないようにする為、思うように反論できずにいた。
その後も責め続けられるが京子は一向に口を開こうとはしなかった。
「中々口を割らんようだな…」
「変な噂がどんどん広まっていっては困る。
裏切り者は処分しなければ…」
「……」
(処分…当たり前か…)
そのまま後ろ手に手錠をかけられ身動きがとれず、京子は反論しないまま隔離部屋へと入れられ、処分を待った。
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一方、
此度の戦争でのみインペラトルの拠点とされている場所では、
シロヤの容体を聞きやっとの思いで任務から帰還したクロエが真っ先に医療班のところへ向かっていた。
「シロヤの容体は!!」
「なんとか一命は取り留めた。おちつけ無色…
今なんとか生きてるのは、白軍のやつのおかげらしい…」
「は、あ…?何言うてはるの…?」
意味がわからないという風にクロエは声を上げる。
「俺も聞いた話だが…
髪の色素の薄い…高く結い上げた子が仲間らしきやつに裏切りだ!と連れて行かれたらしい」
こんなリボンしてるんだと。と、
ジェスチャーで特徴を教えられたクロエはすぐ前に助けた京子が浮かんだ。
「あの女…」
(何考えとるんや…。でも今シロヤが生きてるのは…)
ちっと舌打ちをしたあと、クロエは踵を返した。
「無色どこへいくんだ!」
「野暮用です!!シロヤが起きたら連絡お願いします!!」
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「責任はうちが取ります…というか、これぐらいの情報開示した程度で、赤軍は不利にはなりまへんやろ?」
「ううむ…」
クロエはあの後すぐにリーダーの元へと赴いていた。
「シロヤは大きな戦力やろ?
それを死なせずにすんだのは…紛れもなく件の女のお陰です。
諜報が言うにはそん人死刑寸前とか…助けるのが義理ちゃいます?」
「しかし帝国軍だぞ?」
向こうが死刑になるのはおかしいとクロエは主張するが、リーダーは助ける義理はない、という。
それもそうだ。
勝手に助けたのは向こうなのだから。
すると、この部屋の扉がノックされ、失礼します、という声とともに誰かが入ってくる。
「私から、もお願いします…」
それは顔色の悪いシロヤだった。
「シロヤ…!大丈夫なん!?」
なんとか立っているだろうシロヤにクロエはすぐさま駆け寄り、彼を支えた。
「あぁ…。
…お願いします、どうか…」
シロヤは懇願しながら頭を下げた。
「…条件がある。シロヤ、君がそれを飲めるのならーー許そう。
元は君の招いた結果でーーそして助ける必要もない人物を助けてくれと言っているのは君だ。
いくらインペラトルが個人ごとに構成されている組織だとしても…インペラトルというものに所属しているからには、それなりの責任を取ってもらわなければならない」
あまりの二人の頼みように、ついに上官は折れた。
…と言っても、条件付きで、だ。
その後条件を聞いたシロヤはすぐさま頷いたのだった。
「その条件を飲めばいいのなら…飲みます」
「シロヤ!!」
「うるさいクロエ」
「…うっ」
条件をともに聞いていたクロエは反対の意をシロヤの名前を呼び唱えるが、それはばっさりとシロヤに切り落とされた。
「…わかった。許可しよう。
すぐ書簡と資料をを用意する」
なんでそこまで日本公帝国軍の人間に肩入れをするのか、インペラトルのリーダーにはわからなかったが、
シロヤの目を見ていると何か彼も思うものがあるのだろう、と取り敢えずはそれで済ませることにした。
資料作成にはしばらく時間がかかるらしい。
八千代京子の死刑まであと、4日ーー…
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「…どういうつもりなん、シロヤ…!!!」
「…何がだ」
だんっと机を叩いたクロエにシロヤは表情を変えずに尋ねた。
クロエの顔は怒りとやるせなさに染まっている。
「何がて…なんで、なんであの女にそこまでする必要があるん!?」
「…お前も頼んでいただろう」
「それは…っシロヤが生きてるのはあの女のおかげやし…でも、シロヤがあんな条件飲む必要ないやろ!?」
資料を見ていたシロヤはその手をとめ、先ほど出された“条件”を思い出していた。
八千代京子の死刑をなきものにするために、先にクロエが提案していたのはこうだ。
「シロヤを一度は死なせず助ける条件として謎の多いインペラトルの情報を与えることになっていたという契約を秘密裏に結んでいた」
だからシロヤを助けたということにし、その契約通り、こちらが情報を一つ開示すればいい、というものだ。
そしてリーダーはその内容を許可するために、次の3つの条件をシロヤが飲めればよしとする、といった。
「条件は3つだ。
1.1ヶ月の活動禁止
2.その女との関わりを絶つこと
3.誓う証に戦闘の際には最前線で戦い続けること
これが飲めるのなら、許可しよう…」
「な…っ最前線て、激戦区やないですか!!!しかもたまにやなくずっと!?シロヤを殺す気でいはるんですか!!」
信じられない、というようにクロエは叫ぶ。
それもそうだろう。激戦区へ戦いのたびに駆り出されていたら、死亡率と疲労の蓄積率は倍以上に跳ね上がる。
「帝国軍に漏れても問題ないであろう情報でも、そんなに簡単に開示はできない。
これを飲んでもらわないと、下の者も納得しないだろう。
しかも組織の規律を乱し、動揺を招いた、という点もある」
「せやけど…!」
「嫌なら、飲まなくてもいいんだ。先ほども言ったが、帝国軍は敵対勢力だ。
助ける義理はないだろう?」
納得いかない、といった風なクロエにリーダーはそういう。
クロエとリーダーのやり取りを静か目を閉じて聞いていたシロヤは、去り際の京子を思い出していた。
そして、ゆっくりと目を開け、リーダーを見据える。
まっすぐとした意志を宿した目が、リーダーを貫いた。
「…その条件を飲めばいいのなら…飲みます」
そうして、今。
「なぁなんで…!?
お願いやからやめる言うてや…!!」
「やめない」
「あての頼みやゆうてもか!?」
シロヤはいつもクロエが懇願したらそれに従った。
どんな事であろうと、クロエの意志に逆らうことはシロヤにはほとんどなかった。
「…今回ばかりは、譲る気は、ない」
そしてなぜか、そのほとんど無いに等しい拒絶の意が、今回は発せられたのだ。
「…っつ!!」
ぎりっとクロエは唇を噛み締めた。
それと同時に、この現状の原因となった女への憎悪に駆られた。
(シロヤが、シロヤがシロヤがシロヤ、が、反発した…!?
全部、全部全部全部全部全部ぜんぶぜんぶぜんブぜンブゼンブ…!!!あの女のせい…!!!)
殺す…。再び資料に目を落としたシロヤに気づかれないほど小さな声でクロエはつぶやく。
(やっぱりあん時殺しとけばよかった…!!!!)
シロヤ達がいた部屋の扉がノックされる。
どうやら準備ができたようだ。
今の拠点の現在地から京都まで移動は3日かかる。
八千代京子の処刑までーーあと、3日。
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残酷に時は過ぎて行く。
処刑日となった。
「……どうしても喋りたくないようだな…お前は処分だ」
「…ああ……」
長い議論の結果、口を割らねば処分、とされていたことが実行されることとなった。
京子はその下された審判に静かに頷く。
「少ししか会わなかったが、君は忘れないよ…もっと知りたかった 敵でなければ…」
小さく呟いた京子は処刑人に引っ張られ、処刑台へと立たされる。
「何か言い残すことは」
「…何も、ない」
「そうか…暗殺部隊の主戦力であったお前がいなくなるのは残念だが…悔いるならお前の行動を恨むんだな」
「私は後悔なんてしていないよ...」
短い会話が終わり、静かに処刑人は刀を振りあげた。
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その少し前、シロヤとクロエはなんとか帝国軍の基地前にたどり着いていた。
「貴様ら何者だ!!」
「インペラトルからの正式な書簡です。
日本公帝国軍の責任者殿に謁見願いたい」
シロヤは書簡衛兵に突き出す。
その書簡を読んだ衛兵は慌てて中へと入り、
「たっ大変です!!」
京子達のところへと乱入したのだった。
「何事だ?」
責任者は突然の乱入者にそう尋ねる。
処刑人は振り上げた刀を京子に振り下ろさずに生徒の方に向いた。
帝国軍のお偉いたちもその衛兵へと注目した。
「インペラトル…赤軍の者が基地へ…!上に話があると言っています…っ
武器を所持していないのを見るに攻撃する可能性はないかと…」
「インペラトル…?まさか…」
焦った風に話した衛兵が発した“インペラトル”という言葉に、京子は少しばかり目を見開いた。
「…通せ」
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厳戒態勢の中通されたシロヤ達は責任者を前にすると深く礼をした。
「通していただいたこと、感謝申し上げます」
そういい、再びシロヤは深く頭を下げる。
「私はインペラトル一般部隊所属、無色シロヤと申します」
「同じくインペラトル救護班所属、無色クロエと申します」
「この度はこちらを、我が組織のリーダーより貴殿に渡すよう言い渡されて参りました。
…そこの、兵に関することです」
懐から先ほど衛兵に渡したのとは別の書簡を取り出し見せる。
「急ぎで申し訳ありまへんが、目をお通しください」
「シロヤたち…!?」
インペラトルからの謁見者がシロヤ達だったことに驚きを隠せない京子は何を考えているんだ、という目を彼らに向けた。
シロヤの取り出した書簡と資料は衛兵の手を介して責任者へと渡る。
「個人的な契約…か。
……ふむ…内容はわかった。
……八千代の拘束を解け」
一通り読み終わった男は、衛兵にそう指示を出した。
その指示通り衛兵は動き、京子の手錠が外される。
「ご理解いただけたようで何よりです」
シロヤは礼をしたした後、ちらっと京子を見るが、すぐに視線を外した。
「しかしこの、軍・組織の規律を乱したため罰を受けるインペラトルの兵とは誰のことだ?」
はて、と言った風に帝国軍のお偉いたちはシロヤらを見る。
「……私です。
この度は…個人的な契約のために帝国軍及びその他の団体に混乱を招いてしまい、大変申し訳ありませんでした…。
今後一切、このような事がないよう誓います。
…私達は、敵、ですから…。
どうか今回のことは…これで…」
「罰!?な、なんのことだ、見せろ!」
頭を下げたままシロヤがそう言っていると、驚きの声を上げた京子が資料を持つお偉いの元へ行き、その者から資料を奪い取り目を通した。
「な…そんな…こんなの、こんなの私が認めない!
大体シロヤ、君はなんでそうやって私を助けるのだ?
まだ名も名乗っていない私を、敵である私を、いつも助けてくれる…なんで…」
京子は紙をぎゅっと握り締めながらシロヤを見つめた。
「…日本公帝国軍の軍人である貴殿には関係のないことです。
貴殿がいくら認めないと申しましても、私はインペラトルの人間です。インペラトルの方針に従います」
あくまで京子と目を合わせようとせず、シロヤは答えた。
京子の質問に答えるのを途中でやめ、帝国軍の責任者へと目を向ける。
「この件はこの条件で水に流していただけるということでよろしいでしょうか」
「シロっ…「承諾した。この件の後については此方で対策を練るとする。ご苦労だった」
京子は何か言おうとしたが、それに被さるように責任者がシロヤの質問に対しての答えを発する。
「そ…んな……」
話がまとまってしまい、納得いかない様子でシロヤを京子は見た。
寛大なご決断痛み入ります。
よろしくお願いいたします。
この度は、突然の謁見失礼しました。
…失礼します」
責任者へと頭を下げると、シロヤはスタスタと歩き、京子には目もくれず部屋を出る。
その後ろを続いていたクロエは京子のそばで足を止めた。
「なんで…なんでシロヤがこんな目にあわんといけんの…?
全てあんたのせいや…!次あったら、確実に殺してやる…!!」
覚えとけ、と言うとクロエもその部屋から出て行った。
「この件についてインペラトルの提案を交え話し合う。
八千代」
名前を呼ばれ、ばっと京子は顔を上げる。
「それまでお前は部屋で謹慎していろ。
お前のしたことは罪が重い…が、インペラトルの奴らに感謝するんだな」
金輪際ああいうことは許さない、と言うと京子が発言する暇もなく言ってしまった。
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(八千代京子、日本公帝国軍3年…)
シロヤは事前に手渡されていた資料を見てた。
ーもう君と会えないと思うがー…
あの気を失う前に言われたことをシロヤは頭の中で復唱した。
(そうだ、会うはずがないと先に言ったのは向こうだ。
もとより…二度と会うはずのない人間だった…)
これが正しい選択だとシロヤは思い、京子の資料をインペラトルの拠点に着くと同時に捨てた。
「…では無色シロヤ。約束通り、明日からキリキリ働いてもらおう」
「…了解いたしました」
このまま遠く離れるなんて
(そんなの…悲しすぎるだろう…?)
(これが最良。これが運命)
(…たとえこの身が滅びようと、自分のした過ちは消えない)
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