(今日は君の…)

午後6時半。ユリアンは渋々作業を止め、ニィーベの自宅へと向かっていた。

「なんなんだこれは一体…」

と同時に、道中様々な人に物を渡される。知らない相手じゃない。お客で来たことがある人だったり、ニィーベ経由で知り合ったやつだったりする。
今じゃ両手いっぱいで、これ以上持てそうにない。

「祭か何かか…?」

普段外に出ないから、街の様子なんてわからない。いつも通りだと思うが、もしかしたら違うのかもしれない。
そんな日に外に出る羽目になった原因を作ったニィーベを、ユリアンは静かに恨む。

どうにかして奴の自宅がある建物の前に着き、階段を上り二階へ向かう。
Nieve・Whiteと彫られた石の表札がある。その名の下にはventiscaとマジックか何かで書いてあるようだった。

中から人の気配はしない。
呼び出しておいて居ないのか…?と思いながら、なんとかドアノブに手をかけようとした。というかかけた。ら、バタンと突然扉は開かれ、内開きの扉だったがためにユリアンはそのまま部屋の中の方へと体勢を崩す。

そしてパーンという何かに破裂音。

ずべしゃっと間抜けにこけたところで、人の動く気配がした。

「ユリアン」
「ニィーベ……お前…っ」

湧き上がる怒りに眉毛をピクピクさせながら、ユリアンは床に突っ伏したままである。

「ユリアンまぬけだ〜〜」

ケタケタ笑うベンティスカの声で更にユリアンの怒りゲージは上がった。

「一体、なんなんだっ、よ…?」

ぐぐぐ、と上半身を起こしたところで、真顔のニィーベが目の前に座り込み、なにやらピラピラと紙か布かを揺らしている。

「サプライズせいこーせいこーーう!!ニィーベさんいえーーい」
「いえーーい」

棒読みでいえーいと言ったニィーベは片手でベンティスカとハイタッチする。

ユリアンはというと、起きかけの状態で目を丸くしていた。

「お、ちゃんと断らずにもらったか。これも調理する予定だったんだよな」

何事もなかったかのように立ち上がったニィーベは、ユリアンが体勢を崩すことによってぶちまけたものの幾つかを拾っていく。
仕上げやりますかーと言いながら部屋の奥へ進もうとしたところで、ニィーベはユリアンを振り返った。

「誕生日おめでとう、ユリアン」
「オメデタオメデタ!!」

そう言ってうっすらとニィーベは笑う。
先ほど見せられた物にも、先ほどと同じ言葉が書かれていたのだ。

「たんじょうび…」
「忘れてたなやっぱり」

若干呆れの色を滲ませながら、ニィーベはユリアンの元へ戻り、手を差し出した。

「今日はお前が俺が今まで作ってきた中で多分気に入ったであろうもの、全部作ってやったよ。いつまで惚けてるつもりだ?」

そんなニィーベの手を、ユリアンはゆるゆると掴む。ガッとニィーベが力を入れ、途端上へと引っ張り上げられた。

「おめでとう。また良き一年を」




今日は君の…
(あの行き道のやつって…)
(あぁ、頼んだの俺。いいもの作ってもらってるからって数少ないお客さん手伝ってくれたぞ。俺はこれやる。海の底にある珍しい鉱石だってさ)
(どうしたんだこれ…)
(潜ってとった)
(潜って…!?どれだけ深いところにあると…!)
(海で俺に不可能はない)
(ナーイ!!)


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ユリアンさんの誕生日は6月10日だったけど!!
りこりーちゃんおめでとう!

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