(さようなら)

ユリアンさん目線



ニィーベが死んで、数年が経った。

彼女と出会ったのは、偶然か、必然か。

「海は好きよ。でも、なぜか近づこうとすると足がすくむの。何故かしらね?」

あいつと同じ薄い金髪。

「どうしてここの店を見つけたか?…分からないわ。ぼんやり歩いてたらついたの」

あいつと同じ透き通るようなエメラルドグリーンの瞳。

「こう…落ち着かないのいね、顔に何かつけてないと。だから目は悪くないけど眼鏡をかけてるの。しっくりこないけど」

あいつと似た髪型。

「学校帰りにここに来る理由?…誰かが言うのよ」

この世界には、死者は死んだら世界樹へと還えり、転生の順番を待ち再び生を受けるという。

「あんたになるべく会うようにって。誰がって、私が聞きたいぐらいよ」

それは前と同じ姿や、似た姿、全然違う姿、など様々であるが、稀に前世の記憶を持って生まれるものもいるという。

「あなたとどこかであった気がするのよね。気のせいかしら」

気のせいなんかじゃない、俺とお前は、親友だったんだ。

あいつの面影をこの子でずっと探す。
見れば見るほど、この子はあいつと被った。

この子は知らない。俺がこの子をどう見ているかなんて。
思い出しやしないんだ、どうせ。
記憶持ちも、ぼんやりだったり鮮明だったり様々らしい。
この子は、思い出しなんかしない。

「海、来れたわ」

あぁでも、なぜだ。

「貴方がいたからかしら」

なぜ

「…この喋り方も、変か。俺は思い出した。ユリアン」

お前は思い出したんだ。

「思い出したと言っても俺は、私は。
結局はあなたの知る前の私ではない」

あぁそうだ。けど、

「私は、私でしかないわ」

探さずにはいられない。思い出したのなら、尚更。
どうして死んだんだ、ニィーベ。

「でも。一つだけ。戻らなくて悪かった。ゴーグルも、なくした。…許して、くれ」

そんな事、そんな顔で言われたら、許すほかないじゃないか。

「貴方さえよければ、前の俺ではなく、私は私として、これからもよろしくしてほしいわ」

断ることはできなかった。
わかったと言った後の彼女の、ブランカの顔。

俺は、彼女の気持ちを踏みいじり続けるのか。

ニィーベの代わりにしてしまうのか。

「私、海兵師団に入ることにしたの。
別に前の俺が関係してるわけじゃないわ。ちょっと興味があったのよ」

お前はまた、

「でも海にいけないから、やめておくつもりだった。
でももう近づけるもの。ユリアンのお陰ね」

俺を置いていくのか。

「…そんな怖い顔しないで。今度はちゃんと戻ってくるわ。それで汚いあんたに部屋、片付けてあげる」

ブランカは知っている。
俺が自分をニィーベと重ね続けているということを。
それでもなお、真っ直ぐに。ただ真っ直ぐに俺に接し続ける。
俺は罪悪感でいっぱいで、しかし突き放すこともできず、曖昧なままあいつと交流を持ち続ける。

「帰るんだ、帰るんだ。今度こそ私は、帰る。約束したもの。約束したんだ…!!」

ブランカの事を師団から聞いたときは肝が冷えた。
途端に、今までのことが頭を駆け巡り、ブランカ笑顔が浮かんでは消えていく。

…あぁ、あったじゃないか。
ニィーベと、違うところ。

あいつは、あんなには笑いやしないし、ブランカと違い捻くれていた。

…なんだ、ニィーベはニィーベ。ブランカはブランカじゃないか。

あんな子供みたいなやつと一緒にするな、と親友が言ったような気がした。

そうだな。なにより彼女に失礼か。
ブランカはお前以上に人間ができてるぞ。

「はは。なんて顔してるの。びしょ濡れだから?
!?なに顔叩いてるの!?えっ夢じゃないなって!?当たり前よ現実よ!!?」

柄にもなく全速力で走り、ブランカ元へ向かった。
彼女はボロボロだったがちゃんと生きている。

「言ったでしょ、帰るって。ただいま」

いつからか、お前の笑顔は失うことのできないものとなっていたようだ。




さようなら
(親愛なる友人)
(お前は生きてるよ)
(この子としてじゃなく、俺の思い出の中で)

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