(またね、は嫌よ)

結局救いがない場合のifの話



ヘマをした。敵に捕まって彼までも巻き込んでしまった。

「私が囮になるわ」

だから逃げて、それで助けを呼んで。
反対する彼をどうにか説得して、作戦を決行した。
普段運動をしていない彼と、師団で鍛えている私。どちらが残るだなんて、決まってる。

彼を逃がすためにも私は。
心を決め、わざと敵の前へ姿を現す。
足が震える。歯が鳴る。

(…私、死ぬのかしら)

襲ってくる敵を相手にしながら恐怖に襲われる。

(あぁそれでも)

大好きな彼が生きてくれるのなら、それで全然。

(また置いていくのね。私は)

結局彼は、私を一度も見てはくれなかったけれど。
でも、そばにいれた。幸せだった。
…苦しかったけれど。
私は唇を噛む。
それと同時に敵の攻撃を受け、顔を歪ませた。痛い、痛いよ。

視界が涙で滲む。
動きを止めた私に、敵がトドメを刺そうと近づいてくる。

(あぁ彼は、無事に逃げ切ったかしら)

彼の顔を思い出し、私はふっと笑った。

「さようなら。もう二度と、貴方と出会う事が無いよう心から祈ってるわ」

だって、こんな思い、もう充分よ。

「好きよ」

視界の端で剣が振り下ろされるのを見ながら、私は静かに目を閉じた。



またね、は嫌よ
(血の海に沈む彼女と)
(混じる涙)

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