(頼りにしてるよ)

(やっちゃったな…)

エレノアは茂みに身を隠し、浅い息を繰り返していた。

(行けるだろうと思ってきちゃったけど、思ったより数は多いし…手強いな)

ガサガサと何者かが歩く音と、エレノアを探す声が聞こえる。

頼まれて奪われたものを取り返して欲しいと言われて、いつものように頷いたエレノア。
しかし乗り込んで見れば想定外の数、それでも半分以下にはしたのだ。
バディのチョコボとも逸れてしまい回復ができない今、敵に囲まれたこの状況は彼女にとって部が悪かった。

(…いやでも、やるしかないか。大丈夫、大丈夫。こんなこと、よくあったでしょ)

ぎゅっと震えてしまった腕を押さえつけ、エレノアは息を整えた。

そして痛む身体を無理に動かし敵に向かおうとした時、ひゅんっと一本の矢が敵を射抜いた。

「!?」(なに!?)

思わず動きを止めて矢が飛んできた方を向く。
また一本、きらりと切っ先を光らせ飛んで来、見つけたぞー!と叫んでいた敵が倒れた。

そして次々と矢は飛んでき、エレノアの周りの敵は倒れていく。

(誰…!?)

目を細めてエレノアは矢が飛んできた方を睨みつける。
そこにはミコッテ族の青い髪の男が笑ってひらりと手を振っていた。

「…!?」

見覚えがない、通りすがりのいい人か、と思いながらそれは好都合!とエレノアは振り返りざまに敵に拳を入れ、一掃を始める。
死角となってしまう敵はあの男が次々と射抜いていく。

拳を叩き込みながら、視線を再びやると、その弓を打つフォームには見覚えがあった。
いやでも、彼女はアウラで、いやそういえば…

(あれ、ロロか…!!!)

長い間付き合いがある友人の顔が浮かんだ。
一番新しい記憶では、金髪の長く綺麗な髪を揺らしていたはずだ。

「ロロ!」

敵を倒し終わり、一息ついたところで木の上から降りてきた男にエレノアは近づく。

「やぁエレノア」
「…やっぱりロロなのね、誰かと思った…」
「よくわかったね?」
「わかるわよ。貴方の動きだもの」

助かった、と言ってエレノアはロロの肩をぽんと叩いた。
にしても、とロロの姿を上から下まで眺める。

「貴方に見下ろされるの、新鮮だね」
「俺も見下ろすの新鮮〜」
「…強くなっちゃって。負けてられないね…ってて…」

ふむ、と動いた時に傷が痛み思わずエレノアは顔を歪めた。

「大丈夫!?…強くなったからね、守られるばかりじゃなくて、今度は俺が守る番だよ」

だから安心して、と胸を叩くロロに、エレノアは微笑んだ。




頼りにしてるよ
(少女に守られていた少年はいつしか、)
(彼女の隣に立ち)
(二人は背中合わせに戦う)

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