(その男、)
「じゃあ定期報告をお願いしようか」フランシスは月明かりだけが差し込む暗い部屋でいつもの笑みを受けべながらそう言った。
しかしその場にいるのはケールとメイドのエリザベスのみ…
ケールは口がきけないため、エリザベスが何か言うのかと思いきや、どこからともなくハァイと言う男の軽い返事が響く。
ケールではない。月明かりの当たらない暗闇の方からその声は聞こえた。
「今回の管理局と政府の小競り合いですが、引き分けみたいなもんですけどまぁ、政府側が押してたかな〜ってトコですね。
被害のまとめはこちらに」
にゅっと暗闇から手が伸びてき、その手が掴んでいた紙をフランシスは受け取った。
「あのままお互い更に削りあってくれたほうがこちらとしては万々歳だったんでしょうけど…政府の将は中々引き際をわかっていらっしゃる」
「アァ、あのあんちゃんねぇ」
「俺が軍にいた時とは違う人なんですよねぇ?いやはや…優秀な方なんでしょうけど、うざいですねぇ。
でもあの小競り合いでどちらも消耗してるのは変わりませんから、数ヶ月は動きやすくなるのでは?」
にゅっと伸ばされたままの手はするりと狐を模し、すいすいと動く。
「そうかい。今回もご苦労だったねぇ。引き続き頼むよ」
主人の命ですしね!とフランシスの言葉に応えるようにケラケラと笑い声がはねる。
そしてすうっと闇から抜け出た男は、月明かりに照らされゆっくりと口元を深くつりあげる。
「ハイド、あんちゃんは本当にいい駒だ」
「報酬もたくさんいただいてますし、お役に立てているようで何よりです」
耳元で光る黒い十字架のピアス、赤黒い髪。
その男は先ほどまで管理局側にいたはずの男、花房巻であった。
「いや〜死ぬんじゃないかってヒヤヒヤしましたよ」
その男、闇側に
(お嬢さんいつも変わらずお綺麗いで!!)
(騒がしくてよハイド様)
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