(幽霊?幻覚?それとも…)

また管理局と小競り合い。
今回の対応は陸軍である一哲が率いる応竜が対応に当たっていた。

その小競り合いは思ったより大規模なものに発展し、そばにいたダイアナ率いる鳳凰の援軍で事の収取はついたものの、事後処理の量は莫大なものだった。

なんとか書類を片付た一哲は休む暇もなく北の荒廃都市の視察へと赴く。

定期的な動向観察だ。
ここでたまにあの真っ黒なあいつと会うんだが…と視線をはしらせるとともに顔を歪ませた。
数十m先に思い浮かべた人物を見つけてしまったからだ。
今回ばかりは構う体力も精神力もない、と回り道をしようとしたところで、見慣れない人物がその人物のそばに立っていたため、身をさっと隠し観察した。

(新しい部下か何かか…?にしてもでかいねえ)

いつも赤髪のでかいのがそばにいたが、赤髪は赤髪でも随分暗い赤だ。
たれ目で片目を隠した男、へらりと笑った感じで一哲は管理局との戦いの際出会った男を思い出した。

そう丁度、あれと同じような髪色に、髪型に、管理局の服を着て身軽に動き回り、人をおちょくったような笑みを浮かべた男。
名前はーー…

『俺の名前?花房巻だよ。おにーさん?』

ばちりと目が合った瞬間、花房の顔と長身の男の顔が一致する。
服装が違い雰囲気はだいぶ違えど、間違えなく、

「なんで管理局のやつがここに、」

ニィッと男は笑う。
にったりと、まとわりつくような不気味な笑み。
そうして右手の指は狐を模し、左手は人差し指のみを立て、口元へとあてた。

『ひみつですよ?』

そう口が動いた気がした。

一度瞬きをすると、その男は忽然と姿を消し、天敵だけがこちらを向いてにこやかに手を振っていた。




幽霊?幻覚?それとも…
(なぁに熱烈な視線をおくってくれてるんだいあんちゃん)
(ちげーし!!!!つーかさっきいた奴誰だ!!)
(はて?はなから一人だったけどネェ)

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