(とある領主たちの逢瀬)
『しゃ、シャーロット…!ら、来月の…!』真っ赤な顔で12月25日の予定を聞いてきた彼の顔を港で船を待つ中思い出し、シャーロットはクスリと笑った。
伊能景敬とシャーロット・チャップリンは付き合い始めて、初めてのクリスマスを迎える。
白い息を吐きながら、シャーロットは鼻を赤くしお目当ての船の到着を待つ。
いつもはあまり自国から出たがらない伊能のため、彼女が佐原へ赴いていたのだが、公演があるのを気にしてか私が君の国へ行こう。と伊能が言ったのである。
「まったく喜劇王をこんな寒空の下待たせるなんて…」
横でなにやらウィーラーがブツブツと言っていたが、シャーロットは苦笑して流す。
ブオーという汽笛とともに、船の影が海の向こうから近づいてくるのが見えた。
「景敬さんだっ!」
ぱっとシャーロットは立ち上がり、そわそわと船が港に到着し、お客が降りてくるのを待った。
お目当ての人物が降りてくるのを見つけ、シャーロットは笑顔になる。
「シャーロット、待たせたな」
寒かっただろう、冷たくなって…と伊能自身が巻いていたマフラーをシャーロットへと巻きつける。
「あ、ありがとう…!景敬さんは寒くないかい?」
「私は大丈夫だ」
「今日は、お洋服なんだね?」
新鮮だ〜とシャーロットは伊能の周りをぐるぐる回りながら彼の姿を見た後、洋装も似合ってるよ。という言葉投げる。
その言葉に伊能はすこし照れたように微笑み、「さすがに和服じゃ浮きそうだからな…」と頬をかいた。
「そっか!前来た時はみんな珍しがって視線すごかったもんね!」
「あぁ…あれは少し…疲れる。ウィーラー」
伊能は苦笑いした後、横にいたウィーラーを呼ぶ。
「は〜やれやれ」
すっとウィーラーも伊能の方へよると、例の物は。ご要望の通りに。言っときますが、貴方のためではなくーー… はいはい、わかってる。助かった。など高い位置でこそこそと二人は会話をする。
あまり内容が聞き取れないシャーロットははて?と首をかしげたのであった。
「それでは喜劇王。また後日」
伊能とのやりとりが済んだ後、ウィーラーは恭しくシャーロットに礼をすると、伊能にけっという顔をしていきその場から立ち去っていった。
「案外付いて行くってごねるかと思ったが…」
また後できちんと礼をしなければな、と呟く伊能にシャーロットは再び首をかしげる。
そんなシャーロットに気づいた伊能は目を細め微笑むと、「行こうか」と片手を差し出した。
「う、うん!」
見慣れない洋装のせいか、いつもと違う人に見えて、シャーロットは頬を赤らめながらその手を取った。
そうして伊能のエスコートのもと連れてこられたのは、リリーの中でも予約いっぱいで有名だというレストラン。
「かっ景敬さん!?ここ!?」
「ここ」
どうりで、ウィーラーがドレスというか少し上品な服をあれだけ推すはずだ、とシャーロットは思った。
「予約いっぱいだったでしょ…?すごいね…!?」
「あぁそれは…ウィーラーに少し…ん゛んっ」
ポロリとなにか言いかけた伊能は咳払いをしたが、シャーロットはさっきの話はこれの件か…!と閃く。
口元に手を当て少し頬を赤らめた伊能は、ちらりとシャーロットに視線を落とす。
「かっこつけたいんだよ、私も」
そう呟き冷えるから早く入ろうとシャーロットの腕を引いた。
そんな伊能にふふっとシャーロットは笑い、うん!と足を進めたのであった。
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「さすがって感じ…!どれも美味しいねぇ景敬さんっ」
「あぁ。洋食はあまり食べないが…ここのはいいな。うまい」
とくに紫蘇と唐辛子が一緒に出てくるところが。それ景敬さんの好みピンポイントだもんねぇ。など話しながら食事を進めていく。
「仕事の調子はどうだ」
「順調だよ!ただ最近女役が多くて…へへ…な…慣れないんだ…この格好とかっ」
へっ変だよね!と笑い飛ばすシャーロットにそうか?といつもの調子で至極真面目そうに伊能は返す。
「化粧もしたんだな?なんだか新鮮だ。青いその服も君によく似合ってる。いつもの君も綺麗だが、今日はより一層綺麗だ」
「ほっ褒めすぎだよ!」
さらりと褒め言葉を並べていく伊能にシャーロットは赤くなりながら慌てて手を振る。
「いや?別にー」
「そっそれよりも景敬さんっ!佐原とか景敬さんは最近どう!?」
これ以上褒められたら爆発しそうだ!と思ったシャーロットはすかさず話題を変える。
「佐原か…。いや、相も変わらずだぞあいつらは。
私もまぁ…今年の冬は割と穏やかに過ごしてる」
ぐーと親指と人差し指で丸を作り伊能は真顔で答える。
「あっそうか…冬は乾燥してて辛いことあるって言ってたもんね。大丈夫そうなら良かったさ」
適度な休みも必要だからね?と言うと無言でふいっと目を逸らされたので景敬さんは〜!!身体大事にしないとダメだよ!とシャーロットは少し片頬を膨らませ怒る。
「こ、んげつのは許してくれ。ここに来るために頑張ったんだ」
目が泳いだままの伊能はしどろもどろとそう言う。
「これでも、楽しみ、で。予定聞くのも割と勇気いったし……自分から行くって言っておいて、仕事で行けないとか、馬鹿にもほどがあるだろう…」
まぁあいつらなら仕事?ほっとけいってこい!とは言いそうだがな…ともそもそと続ける。
「ぐ…っそう言われると、怒るに、怒れない…!」
照れる景敬さん可愛いぃ…という言葉を噛み殺しながらシャーロットは唸る。
「これてよかった。君のそんな格好も見れたし」
「そ、その話題に戻すのかい…?」
「ははっそらせたとでもおもったか?」
すいっと頭を撫でられ、景敬さんには敵わないなぁとシャーロットは思う。
「髪、伸びたな」
「う、うん」
君の髪は綺麗だな、と言われながら髪を片手で梳かれ、シャーロットは顔を赤くする。
(こ…これが大人の余裕…!色気…!!)
「何がいいか、いろいろ考えたんだが…。なんだかんだ服や髪飾りはおくったなと思って。それで、君の黒髪が浮かんで、」
メリークリスマス。と言いながら伊能は上品にラッピングされた箱をシャーロットへと渡す。
「わ、わ!くれるのかい?ありがとう景敬さん!嬉しいや!…あけてもいいかい?」
そっと受け取ったシャーロットはすうっと目線を投げ、伊能に問いかける。
あぁ、という返事を聞き、シャーロットはゆっくりと包装をといていく。
木箱の中から出てきたのは、百合の花の模様が彫られたつげ櫛であった。
「うわぁ、綺麗…!」
「椿油ついたやつだから、とくと髪がサラサラになるぞ」
「おぉ〜!そうなんだ…!へへ、ありがとう!大切にするね…!」
あっ私もあるんだ!と言って櫛を一度箱に丁寧に戻し、おとなしい色合いにラッピングされた長方形の物をメリークリスマスと言いながら差し出す。
「ありがとう。なんだろうか…」
「あけてみてあけてみて!」
そう言われて伊能はリボンを解き皮の箱を開ける。
「む。筆…にしては先が…」
「ちっちっち!」
首をかしげる伊能にシャーロットは指と顔を振りながらドヤ顔をする。
「それはね、万年筆!」
「万年筆…あぁ、ペン先をつけて書くやつ」
「そうそう。景敬さんに似合いそうだなあっておもって」
洋装もあいあまってよく似合ってるよ。とシャーロットがいうと、そうか。と伊能は微笑む。
「ありがとう。大切に使わせてもらおう。
…シャーロット」
「なんだい?」
「シャーロット、シャーロット」
「ふふ、聞こえてるよ景敬さん。どうしたの?」
「俺は君と出会えて本当に良かった」
普段でもあまり見れない満面の笑みに一瞬ぽかんとしたシャーロットであったが、すぐに顔をほころばせると
「私もだよ、景敬さん!」
そう笑顔で答えたのであった。
とある領主たちの逢瀬
(結婚しろ…)
(結婚してないとか……)
(…なんか視線痛いな?)
(どうしてだろうね?)
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