(赤い葉っぱの雨が降る)
「じゃーなんだ、逃げ出したんかお前は」エメラルドグリーンの目が上から私を見下ろす。彼の感情の変化は何も見えない。読めない。
「…っ逃げてなんか、」
「嫌なら嫌っていやーよかったろうがよ」
口ごもり、目線を下に下げると尚も彼は言葉を紡ぐ。
「友達欲しい欲しいって言いながら、お前が自分で一線引いてんだろうが」
低い声。それがずしりずしりと重みとなり、本家の大人たちの声とかぶる。
重い、重い、重い。
「…お前にゃがっかりだよ」
「ーっ」
瞬間、目の前の男に向かって拳を叩き込む。
「…っあんたに、」
殴られたことにより目を白黒させる男のことなど気にせず2、3発鳩尾にまたぶち込む。
「っ、もみ、」
「友達が、たくさんおって、表でキラキラできるあんたに…!!うちの!!!!」
そばにあった消火器を思わず手に取り、振りかざす。
「何がわかるゆうんじゃ!!」
白い、白い。真っ白なこの人が羨ましかった。
明るいところで、いろんな人に感謝されるこの人が羨ましかった。
うちはどうやっても、そっちになんて行けない。
「何もかも持っとるあんたに、あんたにぃ…っ」
いつしか抵抗の声は消えた。
短く息を切らし、組み敷きいた下でピクリとも動かない男を見る。
真っ白な白衣が赤く染まっている。
「あ……あぁ……!!」
消火器をゴトンと落とし、赤が散った両手で顔を覆う。
「ふ…うふ…ふ。ねえぇ…秋雨くん。ふふ」
動かなくなった男の右手を彼女は両手で包み込む。
「アハ。うちら、ずうっと友達じゃって、言ってくれたよねぇ…?」
涙をボロボロと流しながら、女は言葉を続ける
「…口数少ない秋雨くんが大好きよぉ……」
赤い葉っぱの雨が降る
(春夏冬椛さんが クロに決まりました)
(オシオキを 開始します)
(うちはただ、唯一無二の)
(友達が欲しかっただけなのに)
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