(記者の終焉)

2枚目は心当たりがあって、頼みに行くついでに従者であるジェルソンの部屋を訪れた。始めの頃、なにやらメモを見つけたと言っていた。多分それだろう。

そして東條から一枚もらい、あとはジェルソンが回収し、最後の一枚は小鳥遊が見つけた。

「そ…そろったジェルソン!!」
「おぉ、やりマシタネ!」

パチパチとジェルソンが拍手する横で、早く集められて良かったと小鳥遊は安堵する。

「じゃあちょっと追い込みしてくるからさ……」

メモを片手にシステム室へ行き、影霧にパスワードとして組み立ててもらわなければと動こうと思ったところでジェルソンに腕を掴まれる。

「お疲れ様デシタ、藍。…お疲れついでに良い茶葉が手に入ったんですよね。事が終わりましたら、どうぞおのみくだサイナ。あぁそれから、エレベーターで毎度お世話になってる夜鷹さんも誘われては?」

あまりにも突然の提案て小鳥遊は首をかしげる。
何を考えているのやら、とジェルソンの目を見るがいつもと変わらない。それよりも早く次に動かなければならないし、ジェルソンのことを疑う気はあまりない。

「ありがとう!そうだな、まぁ見かけたら誘ってみるさ!」

茶葉を受け取り、小鳥遊は駆け出す。

ジェルソンは手を振りながら小鳥遊を見送り、姿が見えなくなったところでフゥ、と息をはいた。

「すみまセン、藍」

意味深な言葉を残し、彼もまたその場を一時後にした。



猛ダッシュでシステム室へ向かった小鳥遊は相変わらずの臭い顔をしかめながらもすぐさまパソコンを立ち上げる。

“『んお?』”

間抜けな声が返ってきた。

「6枚…!!あつまった…!!」

小鳥遊は揃ったメモを見せてみせる。

“『おぉ!ちょっと見せて!文にして渡す!!』

「待てよ待てよ〜〜」

そういいつつ、一枚ずつ見えやすいように画面の方へ向ける。影霧はそれをメモし、どうやら並び替えているようだ。

「ろ…く!6あるよな…あるよな……」

“『おっけおっけ…ふふふんっと!ほい!たしかこれがパスワードだ』”

影霧は自分が書いていたメモをひっくり返し、小鳥遊の方へ向けた。
じっと小鳥遊はパソコンの画面を見つめる。
文はこう、

“危険、絶望が近づいてくる。未来をすすむために過去を置いていくな。たとえコロシアイが起こってもそれは希望への大きな一歩となる”

「おっけ、おっけ…!これを、???のとこ行って、うてばいいんだね…?」

ガリガリと自分の手帳に言葉を移しつつ、小鳥遊は尋ねる。

“『おう!頼むぜ!!』”

「りょー!かい!」

元気な返事に元気よく返し、小鳥遊は再びかける。早いほうがいい、早いほうがいい。じゃないとあのスズメがまた何を考えるか。

そうして地図上で不明として記されていた扉の前へと立つ。

ドアノブに手をかけた。鍵は変わらずかかっている。パスワードを入力する場所があった。

「よし…!“危険、絶望が近づいてくる。未来をすすむために過去を置いていくな。たとえコロシアイが起こってもそれは希望への大きな一歩となる”!だ!」

先ほど手帳にメモした言葉を器用に手早く打ち込んでいく。Enterを押すとともに、ガチャン、と鍵が開いた音がした。

ゴクリと息を飲み、おそるおそるドアノブに力を入れ扉を開ける。
この先に待つのは何か。扉を開けたところで小鳥遊の目に飛び込んできたのは大量の資料とDVD、そして大型のモニター。

さらにそこには、白鈴蘭の姿があった

「きゃはは!案外早いのね」

可愛らしい少女の声が部屋に響く。

「ふぁ。おま」

対して小鳥遊は目を瞬かせ、気に抜けた声を発した。
それもそのはずである。
目の前にいる彼女は、あのモノスズメが襲来した日、死んだはずなのだから。

しろいすずらんはぜつぼうのあじ

汚いメモを探していた最中にジェルソンが別に持ってきたきれいな字のものを思い出す。

「ぎゃはははは!ウケるぜその顔!!あーあ、ここは僕…じゃなくて私と黒幕様だけの空間だったのに残念」

この腹の立つ口調、あのモノスズメの面影が見える。

「うわ、なん…えっお前なんで生きてんの…は…!?黒幕…!?」

混乱する頭でどうにか言葉を紡ぐ。
わからない。意味がわからない。
ぐるぐるぐるぐる、いろんなことが飛び交う。

「いやーあんたは特別面白いから教えてあげるよ!あれは私の替え玉…この学園の生徒だったやつだよ。だから私はずっとここにいてスズメちゃんを動かしてるわけさ!!きゃはははは!
黒幕様は黒幕様さ、他の誰でもない…素晴らしい存在だよね」

「替え玉…!?なんで、しかもスズメの中身お前かよ…!
は?素晴らしい…?このコロシアイの首謀者がどっかいんのかよ!誰だよ!」

替え玉、首謀者、一気に情報が増えた。頭の整理が追いつかない。
冷静になれ、冷静になれ。必要な情報を集めるのと、たまのサポート、と焦る気持ちをおさえながら部屋を観察する。

「私だよ!!!きゃっは!絶望的ぃ!!!!!
あっ言っちゃったてへぺろりーん!はぁ?いうわけないでしょいくら私があほちんだからって!それよりもまず聞きたいのはあんたどうしてここのパスワードをしれたの?一部の人間しかここのパスワードは知らないはずよ」

とても軽い喋り方に多少イラっとすると、白鈴は突然声のトーンを落ち着かせた。

「ほんっとに頭ゆるっゆるそうな喋り方すんなぁお前…
あぁ?ボクの記者としてのサイコーな勘のおかげだよ…」

(こっれ開いた後どうすりゃいいか聞いときゃよかったな…警備…緩める…?モニター壊す…??)

パソコンのことは言わないほうがいいと思い、当たり障りのない嘘を交える。白鈴の背にあるモニターには影霧がバリケードを崩して行ってる姿が見えた。意識をこちらに向けさせなければ、と小鳥遊は考える。

「あはは!お褒めの言葉あっりがとぉーこれでも首席の生徒会だからよろぴくー
へぇ勘、ねぇ…勘のいい人は嫌いじゃないけどこの場所では邪魔ね。んで?誰からパスワード聞き出したのよ」

「いや褒めてねぇから!?
敵に教えられるかばーーか!!!お前必死に探してやがったじゃねーか!…アッ」

どうやら小鳥遊はまだ動揺しているらしい。イライラもあったせいでぽろっとヒントを落としてしまう。どっちが馬鹿かーー!!と小鳥遊は頭を抱えた。

「私ポジティブ思考なのーあははっ!!!絶望的ぃ!!
へぇ…ってことは桜かしら杜若はほぼ瀕死だしこんな小賢しいことできるのはあいつくらいだものね。ふんっ希望のなりそこないのくせに出しゃ張るんじゃないわよ偽物」

「幸せそうな頭でよかったな!!
……チッほんとお前何してくれてんの!今に見てろよ!
あぁ?希望のなりそこないィ?」

「ありがとぉありがとぉ!!
はっ?なに?私の存在を言うつもり?やめたほうがいいわよ、あなたが頭おかしいって言われちゃう。だって私は死んだって言われてたんだもの突然死んだ人間が出てきたらパニックが起きてそれこそ絶望的じゃない!
ふふ、聞きたい?なりそこないの話!彼らはね……コロシアイを救えなかったのよ」

「どうだかな!言ってみなきゃわかんないぜ。ていうか今お前捕まえればいいんじゃね…?
は…?救えなかった…?」

影霧のバリケード壊しはまだまだかかる様子だ。

(早くしろたま!こっちに集中できねぇ!!!)

軽い八つ当たりだ。白鈴の訳のわからない話にところどころ頭がついていかない。ついていかない、がついていかせる!!!と聞いた端から情報を整理していく。

「私捕まえてどうするの?それでコロシアイが終わるとでも?お花畑ね!絶望ってのはそんな簡単に終わるわけじゃないわよ
そう救えなかった、希望となったのにもかかわらず多くの犠牲をだして生き残ったの。うぷぷ…しんどいでしょうね!また多くの犠牲者が出て!」

「少なくとも煽るやつがいなくなるね!動機のせいだろ大体よぉ!お花畑はてめーの頭だけで十分だ!
………なるほどね。…過去がどうであろうと、ボクはしんないね。確かにもう随分減っちゃった。でもその選択をしたのはまぎれもないボクらだ。ボクらの選んだ未来だ。…そんな未来を選ばざるを得ない状況を作り出してたお前ら黒幕側?は腹立たしいけどな。繰り返すのはしんどい。けど、ボクら全員が死んだわけじゃない。だからまだ、お前らにはぜってぇ負けねぇ!!ポチもタマも、ボクらも!!」

正直小鳥遊の頭は冷静とガチキレがごちゃ混ぜの状態である。今にも中指を立てそうだ。いやすでに立てている。

「あーーーそしたら黒幕様直々に動いてもらうしかないよね!絶対叱られるわぁ…
うわ、うわうわうわ!希望だうわぁ!げぇーろろろくっさいセリフ吐くわねぇ…そう選択したのはあんたたちいままでの犠牲だってあんたたちのせいよ
は?やっぱりあいつら生きてるのね、ちょっと痛い目合わせなきゃ」

「怒られてしまえばーーか!
そうだよボクらのせいだ。だから切り捨てるわけにはいかないだろ!自分の選択には責任持つぞボクは
さぁーーね??もしかしたら今お前はボクの戯言に踊らされれるだけかもよ?脳内お花畑にふわふわだもんな?手のひらでこ〜ろころオツムがもう少し欲しいねぇってかぁ!」

小鳥遊はひたすらに煽る。煽り続ける。意識を自分に向けさせろ、少しでも助けになるようにと。

「いやよ!!!すでに顔面掴まれてるんだから!ご褒美だけど!よだれでそ
は??????な、なんなのよあんたは!むかつくむかつくー!いい?!どうせあんたらはね変われないのよ!今に見てろ!希望のなりかけであるあんたを潰すわ!」

「うわドMかよ…
…潰す?好きにすりゃいいさ。変われなくったって、後ろを振り向き続ける事はない。前に進める。それで少しでも、変わっていけばいい。投げ出さなかった過去は、きっとボクらを強くする。…希望のなりかけがなんなんだかよく知んないけどさ、きっと他の奴らも頑張ってくれるよ」

「どMではないわ、黒幕様限定ね
変われないのよ、簡単に変われたらこの場所にいない…弱いからこそあんたたちはここに閉じ込められてるの。ふふ…他の人たちねぇ……さぁあんたみたいに強い人があと何人いるのか」

それでも他の奴ら信じるしかないだろ、と小鳥遊は小さく呟いた。

「限定でもドMだよぉ〜
今すぐには、ね。…ボクだって克服できないままさ。けど目を背けなければきっと、向き合うことができれば、進める、はず。
…。お前の思い通りに全て行くと思うなよ…」

「うげげげおげえええええこっれだから嫌なのよーキラキラしすぎよ
ふふふ、あらあら!楽しみにしてるわよ!!」

「変な方向にこじれてんなぁお前もサァ…」

少々哀れんだところで視界の端のモニターからバリケードが消え、影霧が侵入していく姿が見えた。
作戦はひとまず成功かと小鳥遊は安堵する。

「そう?ふふ、さぁおしゃべりは終わりよ!!せいぜい足掻いて私たちを楽しませてね!!きゃはは!!!」

さてじゃあ集中、と思ったところでドンッと押され部屋の外へと小鳥遊は転がり出た。

「あ゛!!待てこら!!ぐっあっあっかねぇ……キィーーー!!!たまうまくいったかなぁ……」

閉じられた扉をガチャガチャするも、先ほどとは違いまたかたく閉ざされれしまった。

取り逃がした獲物は大きいのか、それとも。どういう手を打てばいいのか、なんにせよやることは山のようにあるかもしれない。

忘れないようにひとまずメモだ。

言われた通りメモを探してあの部屋の鍵を開けた。部屋の中には久々に見るあいつ。絶望?黒幕?なんの話かよくわからない。頭がお花畑なことはわかった。うまく時間稼ぎはできたといいが…入れていることを祈る。私は希望をつなぐことができただろうか。それはまだわからない。それを見届けるために、残らなければ。“危険、絶望が近づいてくる。未来をすすむために過去を置いていくな。たとえコロシアイが起こってもそれは希望への大きな一歩となる”。この言葉の通り、大きな一歩を私含め皆が進めることを祈る。

私を含め。そう、小鳥遊も共に進むつもりであった。つもりだったが、とりあえず一息いれるか、とお茶会を開いてしまったことが彼女の運命を分ける選択肢であった。

事件が起こり、再び学級裁判が開かれる。
捜査をしていく中で色々と気づいてしまった小鳥遊は覚悟を決めた。

あいつの真意はわからない。
けど、止められなかったボクの責任。

従者の不始末は、ボクが。

これは一つのけじめである。
エレベーターに一人で乗った。
いつも気にかけてくれた彼はいない。

ジェルソンの申し出も断る。
お前にゃ聞きたいことは山ほどある。
けどお前だって決まったわけじゃない。

…夜鷹、もしボクの予想が当たってたらごめんな

裁判場への扉が開く。

裁判は4度目を迎えた。





記者の終焉
(じゃあな、ジェルソン)

(記者は知らない)
(申し訳なく思っていた人物が全ても元凶だったことを)

((あーい。従者に殺されちゃう哀れな藍。希望の芽は摘まなきゃな))
((【おやすみなさい、小鳥遊さん。良い悪夢を】ははっ!))

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