(会いたい、という叶わぬ願い)

「景敬さん…」
「景敬くん、」
「景敬くん、私等はどうすれば…」

頼れる領主を失った民は、弱冠18歳のその息子へと助けを求める。
皆、不安なんだろう。家族を失った者も多い。

「…まずは各々安否確認をしてください。
自分の家族がどうなったか、俺に報告を。協力しあってお願いします。
大まかな安否確認が終了したら、皆疲れていると思いますが、瓦礫の撤去及び、生き残りの捜索を行います」

やってくれますか、と問うと、もちろんだという返答が返ってき、各々バタバタと動き始めた。

先ほどの少年と少女の名は佐江守孝と聖というらしい。
佐江は確か、父の古い友人の名だ。聖はどうやら、孤児院の子供らしい。
佐江守孝を除く佐江家の人間の死亡が確認され、孤児院も、聖以外生き残りはいないらしい。

ほかの子供たちはなんとか、成人した兄姉や、両親など肉親が生きていたのでひとまず安心した。

「お前らは俺のところに来い」

こんな状況になってしまって、どこの家も引き取りにくいとなった時、俺はすぐさま言った。

二人が、弟と妹を彷彿とさせたからもある。
ほおっておけないという思いがあった。

「でも景敬くんも大変じゃ…」
「どこも大変なのは同じだ。行く宛が決まらないというのなら、引き取る。
大丈夫です」

ちゃんと育てます。と言い切ると、景敬くんがそういうなら、と皆納得した。

瓦礫の撤去を少しずつ行いながら生き残りを救出し、被害がだいぶ明らかになった。
佐原の領土で無事だったのは5分の1、そして、民を約半数失っていた。

「景敬…」
「…龍馬、俺に夜明けは、二度とこなない」
「…っっ」
「佐原を復興する」

それから、亡くなった者を弔ったり、瓦礫の撤去が終わった場所に自分の能力で簡易小屋を建てたりと、忙しい日々が続いた。




(瓦礫の撤去はまだ長い時間が、食糧問題も出てきだした…)

「たか、おい!」

(いい加減水の復旧もしねえと、それから、一番は家屋か、みんなも疲れがたまってる)

父なら、父さんならこの状況をどうやって解決する?

「景敬!!おい!!」
「っっ!!!」

山積みの問題とにらめっこをしていたら、急に肩を強くつかまれ揺さぶられて驚いた。

「お前、さっきから何度も呼んだぞ?」
「龍馬…わりぃ、考え事してた」
「だろうな、怖い顔してた。これ」

俺を呼び掛けていたのは龍馬で、怖い顔してたか…とまた考えていると、
龍馬はどさっと目の前に果物を置いた。

「これ、どうしたんだ」
「地下貯蔵庫があっただろ?あそこらへんも襲われてたからあんまり期待をしてなかったんだが、
入ってみたら食糧はまるまる残ってたらしいよ」

お前を心配している街のみんなからだ、と龍馬は言う。

「…そうか、悪いことしちまったな。だけど俺はいいよ。聖たちにあげてやってくれ」

背後の部屋ですやすやと寝ている二人を一瞥すると、はぁ、と目の前の人物が息を吐く。

「お前さん、ちゃんと寝てるのか?
メシは食わんし、ここ2ヵ月まともに寝てないだろう?隈ひどい。
ただでさえ病弱のくせに…ぶっ倒れんじゃないぞ」

顔色が悪い、と言いながら俺の頬を軽く叩く龍馬に大丈夫だ、と返す。

「寝てる場合じゃねぇんだよ…そんな、場合じゃねぇ」

一刻も早く、平和を、安心を、安らぎを、
あの佐原をもう一度、
俺は今度こそ、守らなければ、

「…お前さん、一人で抱え込むなよ」

少し心配そうに龍馬が顔をしかめる。
虐められていた龍馬を思うと、こいつも随分頼もしくなったものだ。

「龍馬」

がたりと俺は立ち上がり、龍馬を見る。

「お、おう…?」
「これから先、まだ大きな問題は残ってる。
だが俺は、必ず佐原を復興してみせる。
それで今度こそ、佐原を守り抜く。
手を、貸してくれ」

俺は龍馬に対して頭を垂れた。
家族を失ってしまった以上、家族に近いカゾクは生まれてからほぼ共にいる龍馬だけだ。
民に泣き言を吐くのは許されない。
龍馬に出さえ、泣き言を言うのは憚れるが、少しの甘えはいいんじゃないだろうか。

泣き言を言える家族はもういない。

しっかりしなくては、崩れたらだめだ、皆、俺だけを頼りにしている。
今崩れたら、佐原は、もとには戻らない。

「…あぁ、当たり前だろう!元からそのつもりだ、景敬」

「…ありがとう」

二度と、二度と。

(繰り返さない、あの悲劇を)

父の最期の言葉を思い出した。





会いたい、という叶わぬ願い
(泣きたい、泣けない、崩れるわけにはいかない)

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