(秋の話)

いつも強気で、凛々しかったあいつが泣いていたのには心底驚いた。
堪えるように、噛み殺すように漏らす嗚咽を愛おしいと思った。

守ってやりたいと、そう確かに思った。

「…俺、さ。好きかもしんねぇ。あいつの事」

柄にもなく、ポツリと真へと想いをこぼす。
4人の中で一番付き合いの長いこの男は、2、3回瞬いた。
そしてニタニタといつも通りの笑みに戻ると「まぁじぃ?」と面白がるような声で言った。

「応援するよォ。僕はさ。友達じゃん?大丈夫大丈夫!良はカッコいいし〜頼りになるしィ。
あの日からハルを一番支えてたのは良じゃん?
きっと、ハルも、良のことォ。好きだよ〜」

声が震えていたのは、どうにか笑いをこらえているのだと思った。

「面白がってんなお前…」
「やっだなァ。応援してあげてんのぉ〜感謝してよねぇ?」

感謝する感謝する。と適当に流し、帰るか。と告げた。

「えっ馬鹿なの?ハル誘いなよぉ〜」

ほら、行った行った。と教室を追い出される。
お前は帰らないのか?と聞くと、僕はまだ用事あるからサァ〜と言って手を振っていた。

玄関まで降りたところで、春時雨とクロが待っていた。

「?秋雨、真は」
「あ〜や、なんか残るって。クロ、俺も一緒に帰っていいか?」
「…」

クロは答えず何かを考えているようだった。

「クロ?」
「あ、いいえ。忘れとったこと思い出しまして。お良はお梅の事送ってってくれはりますか。自分、用事かたしてきます。時間かかるので先に帰ってや」

そう言うとヒラリとクロは廊下へ戻り、階段へと消えていった。

「よくわかんねぇ奴らだなぁ」
「そうね…?」
「…帰るかァ」
「うん」

あの時震えた声を出していたのはなんだったのか。
俺をとっとと追い出したのはなぜだったのか。
その理由を俺は知ることはないし、これ以後気に止めることもなかった。




どんかん
(数年経った時、酒の席で笑い話のように全貌を話された俺は自分の鈍さにほとほと呆れるしかなかった)

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